企業のファンダメンタルズ分析において欠かすことのできない情報源が「会社四季報」です。今回は四季報について後半編として説明いたします。

四季報チェックポイント4:増配

配当額を前の期より増やすことを「増配」といいます。増配の発表も株が上がる要因となります。何年にもわたり増配を行っているような企業は継続的な成長を実現し、かつ株主への利益還元に積極的な企業として評価できるでしょう。

四季報チェックポイント5:業績変動

四季報の大きなポイントが、銘柄欄の横にある矢印。これは今期営業利益の予想値について、四季報の前号と比較してどのように修正されたかを表したもの。矢印の向きと本数で5つのパターンがあり、短期間での業績変動がひと目でわかります。「好業績な割安株」を探し、上昇トレンドをキャッチするには、業績の上プレ傾向をいち早く察知することが重要です。上ブレを見つけるために役立つサインが、この矢印です。単に「上向き矢印2本」が表示されている銘柄を探すだけでも参考になりますが、さらに、この矢印欄だけを前号、前々号と比較して見てみれば、業績予想を上回る勢いで成長している優良銘柄を見つけ出すことができるでしょう。

図解:営業利益予想値の矢印のパターンと意味

株式·財務·指標等·キャッシュフロー一株式や財務の状況は?-財務諸表である「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」など、会社の財務状況がわかるデータが並んでいます。

四季報チェックポイント6:株式

直近の株式関連のデータがまとめてあります。一番右上の数値は、その時点での発行済み株式数。企業がすでに発行した株式の総数を表します。

・単位:1売買単位当たりの株式数。つまり1株、10 株、100 株、1000 株など、1回の売買で取引できる単位のこと。100 株とあれば、株価×100 で最低いくらの資金があれば取引できるかがわかります。

・時価総額:発行済み株式数に株価をかけた値。企業価値や規模を表す指標の一つ。

四季報チェックポイント7:大型株

時画総額1000 億円以上の大型株は、基本的に発行済み株式数も多く、値動きがゆるやかな傾向にあります。急落するリスクが少ない反面、急騰するケースもあまりなく、中期投資で大きな利益を上げるには適していない銘柄といえます。

四季報チェックポイント8:財務

財務欄には、貸借対照表を要約した数値が掲載されています。 データは各社が発表する「決算短信」をベースにしています。以下は、主にチェックしたい項目です。

・総資産:会社が保有する全ての資産を足した額。売上高や時価総額とんで、企業の大きさを表す指標の一つ。銀行からの借金や、株主から確かったお金も純資産に含まれます。

・自己資本:総資産のうち、株主などから調達した資本金と、経営活動の結果得られた剰余金とを合計したもの。自己資本は、銀行からの借入などの負債と違い、返済の義務がありません。

・自己資本比率:総資産に占める自己資本の割合。高いほど経営が安定します。

・有利子負債:利子を付けて返済する必要がある負債(借金)の合計。ゼロに近ければ財務はかなり良好。

四季報チェックポイント9:自己資本比率

自己資本比率の平均は 40%程度で、50%以上ならばほとんど問題なしといえます。30%程度でも問題ないケースが多いのですが、それを下回るとやや心配です。貸借対照表で資金繰りをチェックする必要があります。ただ自己資本比率平均は業種によって多少異なるので、同業他社と比較したほうがわかりやすいといえます。

四季報チェックポイント10:財務指標

指標等では、どれくらい効率よく経営を行っているのかがわかる指標が載っています。

・ROE : Return on Equity の略で、日本語では「自己資本利益率」。株主から預かった資本を元手に、どれくらい利益を生み出すことができたか、収益力を測る指標。

・ROA:Return on Assets の略で、日本語では「総資産利益率」。会社ボ十地·建物、工場、現金などの資産を使って、どれだけ利益を生み出すことができたかを見る指標。

四季報チェックポイント11:キャッシュフロー

現金の増減など、お金の流れを表すキャッシュフロー(CF)データが掲載されています。

・営業 CF:本業による現金収支。設備投資があまり必要ない企業の場合には営業利益や経常利益の 0.6 倍程度、製造業のように設備投資が必要な企業の場合には、営業利益や経常利益の1倍程度が標準的。赤字の場合は少し懸念事項になりえます(特に製造業)。

・投資 CF:設備投資や企業買収などに伴う現金収支。赤字が普通だが、赤字額が営業 CFの範囲内に収まっていることが理想です。

・財務 CF:資金調達活動に伴う現金収支。プラスの場合は借金を増やしている可能性があります。マイナスの場合は、借金返済や自社株買いや、配当支払いなど株主還元をしている可能性もあり、注意する必要があります。

四季報チェックポイント12:資本移動(株式分割や増資)

会社は株を発行して資金を集めていますが、すでに発行した株式の数(発行済み株式数)を増やしたり減らしたりすることがあります。このことを「資本異動」といいます。分割などによる資本異動について、実施された年月と内容が掲載されています。

・公:公募増資。企業が資金を調達するために、広く一般に株主を募集すること。新株発行の形態の一つ。

・三者:第三者割当増資。公募増資と同じ新株発行の一つだが、業務提推先や取引先など、発行する相手が特定されている。経営状態が悪いときなどに利用されます。

・分:株式分割。すでに発行されている株式を分割して、株式数を増加加させること。「分1→2」なら、1株を2株に分割したという意味。

・消却:自己株式の消却。自社の株式を市場から買って保有している株を、文字通り消却してしまうこと。その分発行済株式数は減少する。

四季報チェックポイント13:資本移動(株式分割や増資)

増資とは、新しく株式を発行して資金を調達することをいいます。企業は集めたお金を使って、借金を返済したり新しい事業に投資をしたりします。増資が行われると、 発行済み株式数が増えて1株当たりの価値が下落するため(=株式の希薄化)、需給関係がー時的に悪化し、株価が大きく下落することがあります。一方、株式分割はプラスの材料と見られることがあります。分割されたことで株主が持っていた株式数は倍になるものの、株価も半分になるので、他値としては変わりません (損も得もない)。しかし株価が安くなればより多くの人が投資しやすくなるというメリットが生まれるのです。また株式分割するということは元の株価が高くなったということなので、企業が成長している証拠でもあります。

四季報チェックポイント14:株価指標

チャート欄には月足チャートが表示されています。ここ数年の株価の動きを大まかに把握することができます。株価指標欄には、基本的な指標票である予想PER、PBR、株価、最低購入額などが記載されています。

・予想PER:株価を1株当たり純利益(EPS)で割ったもので、数値が低いほど割安と考える。

・PBR:株価を1株当たり純資産(BPS)で割ったもので、割安さを測る水準。PER が株価と利益の関係を表しているのに対し、PBR は株価と資本の関係を表す。

いかがでしたでしょうか。投資の中でも最もポピュラーな株式投資を学ぶことで、自身の金融リテラシーを大いに高めつつ、資産形成に繋げることができます。資産運用に興味のある方は少額からでもいいので、一歩ずつ無理のない範囲でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。