円高は「円」の価値が「高」くなること、円安は「円」の価値が「安」くなること

金融に大きな影響を与えている大きな要因の一つに為替、すなわち「外国為替相場」が挙げられます。例えば円高や円安という言葉にはどんな意味があるのでLようか。

外国為替市場で円の価値が高くなり、たとえばドルの価値が下がると「円高(ドル安)」といいます。反対に円の価値が下がり、ドルの価値が上がると「円安(ドル高)となります。円高では円の金額が減り、円安だと円の金額が増えます。なぜかというと、為替相場は「1ドルが何円で買えるか」をあらわしているからです。

たとえば、前回は1ドルが110円で買えたのに、今回は円の価値が下がって115円出さないと買えないという場合、5円の円安となります。逆に105円で買えたら、5円分、円の価値が上がっている=円高となるわけです。円の金額が減ったら円高、増えたら円安と呼ぶのには、そういった理由があります。

円高では金利が下がり、円安では金利が上がる

この為替相場は、金融にどんな影響を与えるでしようか。

まず、為替と金利の関係を見てみましょう。為替相場が円高(円の価値の上昇)が起こると、海外から買う原材料や食品、原油など輸入品の価格が相対的に下がります。以前は110円で買っていたものが、105円で買えることになるからです。

つまり、国内の物価が下がります。物価が下がるデフレでは、企業の設備投資なども減ることでしょう。お金を借りたい人が減るので、円高は金利の低下につながるのです。

また円高は、円を買って日本に投資しているわけですから、海外からお金が流れ込むことを意味します。そのため、国内のお金は余気味となり、これも金利を下げる要因です。

円安になる(円の価値が下落する)と、逆の現象が起こります。円安で景気がよくなる、とは限りません。

次に、為替相場が景気に与える影響はどうでしょうか。一般的には、円安で景気がよくなり、円高で景気が悪くなるというイメージをもつ人が多いでしよう。これは、日本が長らく貿易黒字で、輸入量より輸出量のほうが多かったためです。

円安だと相手の通貨の価値が上がっているので、日本円で同じ金額を輸出しても、より大きな売上になります。逆に輸入は、より多額の日本円を支払わなければなりません。

つまり、輸出産業が恩恵を受け、輸入産業は打撃を受けるわけですが、貿易黒字だと全体として受ける恩恵のほうが大きくなります。そのため、結果として円安で景気がよくなっていたのです。

しかし、近年では貿易赤字で輸出量より輸入量が多い年もあり、一概に円安で景気がよくなるとはいえなくなっています。一方、株価と為替相場の関係も単純ではありません。一般論としては、円高は日本経済が強い証拠ですから株価も上がります。また、円高では金利が下がるので、これも株価の上昇につながるでしょう。

しかし、円高の反動で過度のドル安が進んだりすると、世界的な株安につながりかねません。また、輪出産業は円高で打撃を受けますから、輸出中心の製造業などの株価が下がり、それが全体に波及することもあります。

景気は循環する

景気は、ある周期でよくなったり悪くなったり、循環するものです。新聞などで、「景気循環」ということばを見かけたことはないでしょうか。いわゆる「景気が底を打つ」状態を「景気の谷」といいます。この景気の谷から回復して「景気の山」を迎え、景気が後退して再び谷に達するまでがひとつの循環です。

景気の谷と聞くと、最悪の状態を想像しますが、見方によってはそうでもありません。ここから景気は回復し、拡大するー方だからです。

しかもその前に、先行して株価の上昇が始まります。株価は、景気に先行して動くためです。

金利と株価の関係が景気を動かす

景気が底を打つと金利が上昇を始めますが、まだ株価を下げるほどではなく、株価は上昇を続けます。景気も拡大が続き、「景気過熱」などと呼ばれる時期です。

このヘんで経済は「不況」を脱し、「好況」となりますが、金利はまだ上昇を続けます。しかし、ある時点から株価の下落が始まるのです。金利の上昇が続くと、株価は下がるためです。こうして、いわゆる「景気が天井を打つ」景気の山を迎えます。

金利は低下を始めますが、まだ株価を上げるほどではなく、株価の下落は続くことでしょう。景気も後退を続け、不況といわれるようになりますが、金利の低下はさらに続きます。

すると、ある時点から株価が底を打ち、上がり始めます。金利の低下が続くと、株価は上昇するのです。先行する株価に続いて景気も底を打ち、こうして次の景気拡大局面が始まります。