今回はWゲインシートの使い方について解説していこうと思います。
そもそもWゲインシートとは不動産会社で一般公開されている情報の中で特に不動産選定でキーとなる指標を抽出し数字を打ち込んだものを指します。特にフォーマットに指定はないのでこの記事を理解していただいた方は自分でエクセルないしはスプレッドシートを活用して自身の見やすいゲインシートを作成してみてください。また、検索エンジンを介してゲインシートを調べるといくつか無料提供しているものがありますのでエクセルのマクロ(アルゴリズム)はそちらをご活用ください。
それでは、不動産販売会社でよく見かける「マイソク」と呼ばれる不動産(物件)の概要資料の例から数字を抜き出し、各自のゲインシートの項目に従って埋めてみましょう。Wゲインシートとは、不動産物件の購入時から借入の完済、もしくは売却するまでの収支を1枚にまとめた表で、この表を見ることで、購入を検討する物件が、負債ではなく、購入後にどれくらい利益が出るかが一目瞭然になります。このシートを使うことによって、実際に物件価格に対して自己資金をどれくらい用意してローンの年収を何年にして金利をx%でローンを組んで購入した場合実際にどれくらい利益が出るか具体的な数字を算出することができます。
<Wゲインシートでポイントとなる5つの数字>
Wゲインシートに必要なのは、5つの数字です。優良物件であるかどうかを知りたい物件の価格、その物件を購入するときの借入率、借入の際のローン年数、あなたが金融機関からお金を借りるときの金利、そして利回りです。
店頭価格…売り主が「なぜその金額で売りたいか」は気にしなくてよい。
店頭価格は、一目瞭然です。不動産販売会社の軒先やインターネットの物件情報サイトに掲げられている物件情報の数字のことです。ただ、人間は感情を持っているので、「この価格は相場より高いから、交渉すれば安くなるはず」とか「相場よりもだいぶ安い。何かネガティブな理由があるに違いない」といったことを感じるかもしれません。そうした感情は、Wゲインシートを用いて優良物件を探す段階では考えなくてよいでしょう。なぜなら、「優良物件」という土俵にあげられる物件はそこまで多くないからです。いえ、むしろ非常に少ないといったほうが正しいでしょう。相場より高く売っているのも、安く売っているのも、それ相応の理由があります。でもその理由は売り手によって実にさまざまであり。非常に個人的なことです。不動産販売会社やインターネットに出ている情報だけで、それを知ることはできません。しかも、たとえば売り手が「事業に失敗したから売っていた」とわかったとしても、それはあなたには関係のないことです。「その売り手は、その金額で売りたい」ということだけで必要十分なのです。
金利…金融機関から提示された借入に対する金利
金融機関からお金を借りるときには、当然ながら金利がかかります。その数字も入力に使います。事前に金融機関に確認しておくと、シミュレーションが可能になります。基本的に、不動産投資ローンは住宅ローンと比べて高い設定になっています。おおよそ1%台後半から3%台が目安です。金融機関によって条件は異なるので、1行だけでなく、複数の金融機関をまわるようにしましょう。
返済年数…金融機関から提示された借入に対する返済年数
不動産投資ローンの返済年数は、人によって異なります。一般に、年齢が若いほうが有利だといわれていますが、資産(担保)の有無や、その投資内容によっても変動します。実需用に利用される住宅ローンはその人の属性や年収などの返済能力が重視される一方で、不動産投資ローンは投資自体の優劣が重視される傾向にあります。つまり、今から行おうとしている不動産投資という事業が、きちんと採算に合っているか、今後もきちんと返済し続けられるかを見られるということです。何年のローンでいくらくらい借りられるかということは、物件の購入を具体的に検討するより前に、金融機関に足を運んで、ある程度の見当をつけておくといいでしょう。
借入率…借入金額+物件価格×100
たとえば1億円の物件を購入するときに、頭金として1000万円を用意できるのならば、金融機関からの借入は9000万円になります。つまり頭金の割合が10%で借入率が8%ということになります。この場合、Wゲインシートには「8」の数字を入力することになります。ほとんどの不動産投資家は、自己資金以上に借入を行っています。端的にいえば、大きな借入を行うことで、大きなリターンを得ようという考えです。そう表現すると、ハイリスクであるように感じますが、そうとは言い切れません。皆さんもご存じのように、今は超低金利時代だからです。金利が限りなく安いからこそ、頭金を10~0%程度にとどめた場合でも、リスクを抑えたままの不動産投資が可能なのです。
利回…物件情報に記載
満室時の数字を転載すればよい物件の利回りも入力します。通常は物件情報に「表面利回り0%」とか「満室利回りO%」と書かれているもので、それを転載すればいいだけです。こうした数字は、空室リスクや経年による家賃の値下がりリスクなどが加味されていないのですが、それらはWゲインシートのほうで考慮しているので、心配する必要はありません。
以上の5つの数字を入力すれば0Kです。すると、その物件のインカムゲインとキャピタルゲインが算出でき、購入してもよい物件か否かがわかります。
また、これまでの5つの項目以外についても、簡単に説明いたします。
購入価格(=店頭価格+諸費用)…店頭価格に諸費用を足したものが計算されます。
諸費用の初期値は7%で計算されていますが、購入する物件や、融資を受ける銀行によっても数値が変わりますので、実際の購入物件に合わせて補正してください。
家賃/月…
初年度は利回りから月額家賃を計算していますが、次年度以降は年1.22%の家賃下落率を入れて減少させています。30年間の下落率を30%としているので、初期値の年間下落率は1.22%にしています(一都三県の物件を想定しています。地方の物件の下落率は、より大きくなるでしょう)。
NOl…
総収入(家賃収入)から空室損と経費合計0%を差し引いた金額です。初期値を0%としていますので、運営しながら実態と柔離していったら、変更することもできます。悪化傾向に禿離していた場合は原因も究明して対応を考える必要があります。
物件名…
任意で記載しておくと、あとでどの物件のデータかがわかりやすいです。店頭価格(=販売価格)の内、借入率に相当する金額が表示されます。これが借り入れの元金になります。
返済額/月/年…
月額の返済額、年間の返済額を表します(元利均等払い)。
家賃/月…
月額の家賃を表しています。次年度は前年度の家賃に1から下落率を引いた値をかけています。30年間で約30%の下落になるように、年間1.2%が下落率になります。総収入…家賃の月額を2倍にして年収を計算しています(初年度は店頭価格に利回りをかけた金額と同じになります)。
返済比率…
返済額を総収入で割った値です。8%なら総収入の半分が返済額となります。DCR(債務償還余裕率)…年収から経費と空室損を引いて(=NOI)、返済額で割った値です。
表面利回り…
初年度は利回りの項と同じです。次年度から家賃が下落していくので、この利回りの値も下がっていきます。
実質利回り…
NOI(実収入) ÷購入価格(店頭価格に諸費用を足した額)×100で求められます。実質キャッシュフロー:NOI(実収入)から返済額を引いた手残りを表します。
実質キャッシュフロー(実績)…
実績を記載し、想定と比較することで業績を評価します。実質累計キャッシュフロー…年毎の実質キャッシュフローを足して、累計を計算します。
実質キャッシュフロー(実績)…
実績の実質キャッシュフローの累計を記載します。想定と比較し、業績の評価をします。
購入時の利回りを1%上げて売却した場合の売値…
かなりラフな想定売却益の計算です。総キャッシュフロー…物件を売却して、すべての投資活動を終えたときの全ての収支が表示されます。
累計自己資金利回り…
累計のキャッシュフローを自己資金で割って、自己資金の何パーセントを得られたかを表します。
残債…
経過年ごとの残債を表します。
以上がゲインシートの具体的な使い方の説明とそのシート内で使用する頻度の高い項目の紹介になります。ゲインシートというのは知識ではなく実際にご自身で体感して初めてそのかってや魅力に気づく事が多く全て覚える必要性はありません。ゲインシートに触れる頻度が増えるほどみなさまが物件の指標の中で何が不動産選定において重要なのか、またそれらの数字からその物件に将来性があるのかどうかゲインシートを使用せずとも感覚的に分かる時が訪れるはずです。重要なので繰り返しますが要は慣れが大切になってくるのです。これを機に手を実際に動かして上記の指標に着目してシートを活用してみてはいかがでしょうか。