前回の経営者に焦点を当てた不動産投資入門シリーズも今回で最終回となりました。今までは構造やその立地に触れてきましたが今回は構造のほか知っているようで知らない不動産の種類についてご説明いたします。不動産と言っても構造の他に居住者、事務所向けや単身、ファミリー向けなど様々な種類があり、それぞれ投資の方法や利回りまで全てが異なります。ただどの物件がどういう特性を持っているのか知見があるだけで物件の選定や意思決定速度が格段に向上し、不動産投資における競合と十分に渡り合うだけの力が身につくと思います。

店舗·事務所物件か居住用物件か

居住用ではなく、テナントや事務所など、ビジネス用の物件もあります。一般には、店舗·事務所物件と呼ばれたりします。この店舗·事務所物件の最大のメリットは満室時の利回りのよさです。居住用に比べ、賃料を高く設定できるからです。また、退去時の原状回復のためにかかる費用は、居住用では貸し手側が負担するのが通常ですが、店舗·事務所物件では借り手が負担するケースが多くなっています。しかしながら、居住用に比べて店舗·事務所物件は定着率が低いといえます。事業として成り立たなければ、あっという間に撤退します。つまり空室リスクが高いのです。

また、1階が店舗·事務所用で、2階と3階が居住用という物件もあります。これはハイリスク.ハイリターンな店舗·事務所用と、ローリスク.ローリターンの居住用が併設されているということで、よさそうに見えます。しかし、実際に住む人(借り手)の気持ちを考えると、簡単ではありません。たとえば1階に中華料理店が入っていたら、虫も出るかもしれませんし、雑音も聞こえてきます。要は、快適に過ごせるよう、入るテナントのマネジメントが必要になるのですさらに、多くの場合、居住用の家賃に比べて、店舗·事務所用の家賃は高く設定されており、そこで生じる空室リスクは、やはりインパクトは大きいといえます。

ただし、本業で飲食店のコンサルティング業務をしているなどの特異なケースであれば、むしろ相性がいい物件だといえます。しかしながら、最初の物件では、店舗付きではない物件をお勧めします。

ポイント1

・業務用と住居専用の物件でそれぞれメリットとデメリットが存在する

・店舗を内包している物件はその店舗の業種によって注意が必要、特に飲食店やコンビニなど小売業の場合は害虫問題など居住者に影響を及ぼすこともある

戸建ては手を出してはいけない?

戸建て物件の不動産投資を勧める本もあります。私自身は、なるべく借入をして、その分の利回り=金利分を取っていくという方法ですが、そのやり方を戸建て物件にもあてはめるのは難しいでしょう。しかもかなり手間がかかる一方で、一つの投資あたりの入ってくるお金が小さいため、1棟ものに比べてリターンが小さいといえます。とはいえ、お金があまりない人にとってはアリだという側面もあります。特に戸建ての場合、売り手が投資家ではないことも多いため、意外なほど割安な物件と出会えることもあるようです。

ただし土地勘がなければ、なかなか一戸建てのニーズというのはわかりづらいものです。たまたま自分が住んでいるエリアが、賃貸用の戸建てニーズがあり、かつ不動産投資市場に物件数がそれなりに出回っているのであれば、戸建ても選択肢に入れてもいいかもしれません。

と、ここまでお伝えしておきながら、やはり経営者からすると、お金の増えるスピードが遅いため、歯がゆい思いをするでしょうし、先ほどは割安な物件もあるとお伝えしましたが、基本的には割高な物件が多いでしょう。というのも、もともとは実需用に建てられたものがほとんどだからです。本来、投資は「この場所だとこのぐらいの土地値だから、坪単価は○○円で」という計算をして、収益に合わせて建物を造るものなのですが、実需用に買おうと考えている人たちはそういうことは気にせずに買うので、売る方も買える金額で価格を想定しています。たとえば5000万円のローンが組めるから、5000万円の物件を建てようというようなスタンスです。そのの意味では、確かに立派な物件が多いでしょう。それでも、外壁のグレードが2倍高いからといって、2倍の家賃になることはないですし、キッチンに大理石が使われているからといって、家賃を1万円上げられるかといったら、そうではありません。

ポイント2

・戸建ては収益性を生み出しにくい・マンションなどの集合住宅に比べ、利用者の購入の敷居が高い分ニーズが掴みにくい

・戸建ては不動産価格を算出しづらい

ファミリー向け? 単身者向け?

建物によって、ファミリー向けの物件と単身者向けの物件があります。ファミリー向けの物件の特徴は、メリットとしては入居期間が長いこと、駅から少し離れていても需要があることがあり、デメリットとしては一度退去になったら空室期間が長くなりがち、修繕費用が嵩みやすいなどがあります。

単身者向けの物件は、その反対で、メリットとしては退去しても次の入居者が見つけやすく、修繕費用が安いということ、デメリットとしては入居期間が短く、駅近などの利便性を求められることです。さらに平米(㎡)あたりの家賃単価は、単身者向け物件のほうが高い傾向にあります。こうしたメリットとデメリットを考慮すると、どちらがいいとははっきりとはいえないのが正直なところですが、別の観点を入れると判別しやすくなります。それは、そのエリアの特徴を見ていくことです。たとえば大学生がたくさん住んでいるようなエリアだったら、単身者向けの需要は大きいでしょう。近くに子どもが楽しめる公園があるのならば、ファミリー向けの需要が大きいといえます。そのように、その土地の特徴と照らし合わせると、空室リスクは小さくなるでしょう。

ポイント3

・ファミリー向けと単身向けそれぞれのメリットとデメリットがあるためケースバイケースでその土地の条件に合わせて選ぶ必要がある

以上が様々な物件の利回りや投資における特性をご紹介させていただきました。それぞれの不動産にはメリットデメリットが存在しそれらのリスクマネジメントを余念なく行うことで初めて利益として成果が生まれます。投資はスピードが求められる世界と何度も説明させていただきましたが焦りは禁物です一瞬の判断ミスが後を引く可能性もありうるといいうことを肝に銘じてしっかり理解した上で不動産投資を行いましょう。