金融のプロなら知っておきたい、LBOとMBOの違いとは

  • 2019.11.01
  • M&A
金融のプロなら知っておきたい、LBOとMBOの違いとは

事業会社が何らかの事業目的で合併や買収を行う場合にはM&Aと呼ばれます。一方、ファンドなどのいわゆるファイナンシャルインベスターが投資目的で買収を行う場合には、それをバイアウト(Buy-Out)と称します。

しかし、LBOとMBOについては、そうした買収者の違いといった意味はすでに薄れています。今回はLBOとMBOの違いについて見ていきたいと思います。

LBO(Leveraged Buy-Out)とは

買収の中でも、負債のレバレツジ効果を最大限に利用する、つまり多額の借入を用いて行う形態をLBOといいます。

負債のレバレッジ効果は、先にみた通り、負債をテコとして使って投資効率を上げるという株式投資家からの発想に基づくものです。もちろん、何もなしにそんなに多額の借入ができるはすはないので、この借入は、買収の対象となる企業の将来のキャッシュフローや資産をよりどころとして行われます。

言い換えれば、買収対象企業の資産やキャッシュフローを担保に買収者が借入を行う、という、ある意味荒っぽいファイナンス手法ですが、1980年代の米国において大流行して以来、多く使われています。

MBO(Management Buy-Out)

バイアウトをファイナンシャルインベスターだけでなく、買収対象企業の経営陣がー緒になって行う場合がありますが、これをMBO(Management Buy-Out)といいます。LBOとMBOは語句としては似ていますが、切り口は異なり末す。

前者は財務構成に着目し、後者は買収主体に着目して、それぞれバイアウトのー種として定義されたものです。

MBOでは、企業の経営陣や事業部門の責任者が、それらの企業や事業巷自ら買い取って引き続き経営にあたりますが、実際には多くのMBO案件ではファイナンシャルインベスターが何らかの形で入っていることが多いのが普通です。ただし、企業が主体となって行われるLBO、MBOもあります。

2005年7月に行われた株式会社ワールドの非上場化は、純粋なMBO案件です。ファイナンシャルインベスターの資本ヘの関与はなく、同社社長以下役職員だけで株式を保有する形態となっています。また、非上場化を達成するために同社の将来キャッシュフロー生成力や資産を見合いに約2,000億円の借入を起こし、少数の株主だけが非上場化後のワールドに投資しているということからは、本件は立派なLBOであるともいえましよう。

また、経営陣ではなく從業員が主体となって自分の勤務している企業を買い取ることをEmloyees Buy-Out、EBOといいます。

なお、バイアウトをきっかけに、ファイナンシャルインベスター自身(もしくはその意在受けた者)が経営陣のー角に入ってきて、買収のみならず、その後の経営も主導するような形をMBI(Management Buy-ln)といいます。

MBOにおける利益相反

MBOを巡っては、きわめて重要性が高い問題があります。雇われ経営者が自社株を買収してオーナーになるという点で、取引自体が利害相反を内包しているからです。経営者による自社株買収が行われますが、この取引をよくみてみましょう。

経営者としては、自社の株式はなるべく価値を高く売りたいものです。一方で、買収者としてはなるベく安く買いたいはすです。後者の意図を優先させれば、会社に害をなしかねません。経営者は、企業の実態に関しては豊富に情報を持っていますし、それを左右する力もあります。したがって、それらを悪用されたら、株主としてはひとたまりもありません。

たとえば、株式の買収価格在引き下げるために、不当な業績の下方修正を行うことも可能ですし、業績に限らずとも、株価が下がるようなニュースをあえて流すなどということもできるでしょう。実際に、こうした経営者の利害相反取引はいくつも訴訟に発展しています。

たとえば、レックスホールディングスのMBOにおいては、買収者(=経営者)が株式の取得価格を引き下げるため、不当な業績の下方修正を行ったかどうかが問題となり、「相当程度の確実性をもって具体化していた本件MBOの実施を念頭において、特別損失の計上に当たって、決算内容を下方に誘導することを意図した会計処理がされたことを否定できない」といった判決が出ています。また、シャルレのMBOでは、買収者(=経営者)が、株価の算定方法に不当に介入したり、算定根拠となる利益計画を意図的に低く修正したりしたことについて、内部通報が相次ぎ、結局のところ第三者委員会が調査を行って、実際に経営者が利益相反行為を認めるに至っています。

少数株主の締め出し(Squeeze Out)

また、MBOをはじめとした様々な企業買収では、少数株主の締め出し(=Squeeze Out)が行われることもあります。せっかく上場企業の株式を持って、将来の株価上昇を楽しみにしているのに、ある日突然その株式を強制的に取り上げられるようなことが起こるわけです。

たとえば、MBOが行われる場合には通常、TOBの実施が発表され、買収者(=経営者)が、株主が持つ株式を買い取りたいと言ってきます。買取り価格は、その時の株価にいくばくかのプレミアムが載せられているのが普通ですが、これはあくまで買付者側がー方的に決めたものです。株主としては、その価格に不満なら公開買付けに応じる義務はありません。

ところが、TOBに応じないでいるとどうなるでしょうか。多数株主となった買収者(=経営者)は、90%以上を保有する場合には、他の少数株主全員に対して所有株主を自分に売り渡すよう請求できます。

また、多数株主でありさえすれば、すベての株式を「全部取得条項付株式」という種類株に変えて少数株主を排除することもできます。このように少数株主の権利を実質的にないがしろにしかねない点にも留意する必要があります。

 

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