証券会社のシステムのノウハウ#2

証券会社のシステムのノウハウ#2

今回は前回に引き続いて証券会社システムのノウハウについてお伝えしていこうと思います。

|株式の決済システム

取引の翌日以降、資金や証券の受渡(決済)に向け、準備を行う必要があります。資金については、証券会社全体の資金の出入りを確認し、必要な資金の調達(資金繰り)に向けたデータを作成します(下図の)また勘定項目ごとに仕訳処理を実施して、会社全体の会計データを作成し会計システムと連携します(②)。これを受け決済日(日本の株式では取引の3日後)までに銀行に必要な資金を準備し、現金を受け渡します証券の受渡も同様に行います。旧来は紙の証券券面を運搬し受け渡」ていましたが、現在では大半の株式で券面をCSDが預かり電子化しています。この場合、各証券保有者がCSDに口座を持ち、その口座で残高を管理しています。日本では完全に電子化が進んだため、証券の受渡はCSDにあたる証券保管振替機構(保振)のシステム内で口座振替を行います。これは、後述するように清算機関からの指示によります。なお、日本では証券会社単位でCSD に口座を持ち、個人投資家の持ち分は証券会社が管理しています。また機関投資家は受託銀行がCSDに口座を保有しており、個別投資家の持ち分は受託銀行が管理しています(2-4参照)。証券会社ではCSD より決済予定を受け取って確認(③)した上で、基幹システム内の顧客残高を、決済処理に合わせて更新します(④)。取引所は、約定結果を清算機関に送付します。ひとつひとつの取引ごとに証券会社間で証券と現金のやりとりを個別に行うのは非効率なため、

図解:決済処理の仕組み

取引を清算機関(日本では日本証券クリアリング機構)でまとめ、証券·資金の決済機関に対して振替指図を行います。*のとき、証券会社間でのやりとりを証券会社清算機関とのやりとりに変換し保証することで、証券会社が現金や株式を準備できないリスクにも備えます。そのため、清算機関はCCP(2-1参照)とも呼ばれます。その後、清算機関は振替指示を決済銀行とCSDに送付し、証券会社と速質機関の銀行口座、CSDの口座の間でやりとり(振替)を行います。日本では、CSD により株式·現金を同時にやりとりするDVPで決済が行われています。

証券会社の対顧客システム

顧客と直接関わる証券会社のシステムについて、株式取引を中心に説明します。個人投資家向けには、店頭やコンタクトセンター、オンライントレードなどの取引サービスが提供されています。店頭やコンタクトセンターでは営業員向けシステムが提供されており、PCやタブレットからCRMなどを利用し、顧客情報や顧客口座情報、コンタクト履歴、市場情報などを参照できます。端末上のシミュレーションツールなども併用しながら、投資相談や商品推奨、株式の発注などを行います。インターネットを介して手軽に証券取引ができるオンライントレードは手数料が低めに設定されていることもあり利用が広がっています。またオンライントレード専門の証券会社(ネット証券)も存在感を強めています。オンライントレードでは、証券取引所へ発注ができ、顧客の残高をリアルタイムで提供します。Webブラウザで専用のサイトに接続して利用することが一般的ですが、操作性を高めるためPCやスマートフォン向けに専用アプリケーションを提供する例も増増えています。機関投資家(法人)は、営業員やディーラーへの電話やメール、もしくは電子的に注文します。最近では機関投資家の注文管理システムOMS:Order Management System)から、ネットワークを経由して証券会社のOMSや執行管理システム(EMS:Execution ManagementSystem)に直接注文データを送付することが一般的になってきています。

図解:証券会社の対顧客向けのシステム

債券取引のプロセス

証券会社では、国や地方公共団体、企業などが利率や期間を設定して発行する債券も売買します。債保有者は発行時に特定金額を支払い、刻惑を定期的に受け取った上で、期間終了(満期)の際に支払金額の払戻しを受け取るのが基本的なプロセスです。この債券を満期前に売買する場合、証券会社が仲介します。借券は多数の銘柄があること、発行体が同じでも利率,満期日が異なるものが多数あること、流通量(流動性)が限られていること、などの特徴があります。また、株に比べて取引の単位が大きいことが一般的です。これにより、国債など流動性が高いものは取引所で取引されることもありますが、それ以外の取引は相対で行われることが大半で、証券会社では在庫を保有し投資家や他の証券会社の求めに応じて取引条件を提示します。このため、在庫管理や価格計算のシステムを保有しています。また、保有しない債券については、他の証券会社に電話、メール、情報ベンダーのメッセージシステムなどにより在庫と価格を問い合わせ、その結果を基に投資家に販売することがあります。各社の提示条件を一括して閲覧できるサービスも提供されています。取引が確定し、約定処理を行った後、約定や決済の内容照合、決済が行われます。清算機関やCSD(国債は日銀、一般債は保振)で清算、証券決済(口座振替)、資金決済を行う点は株式と同様です。

図解:債権の売買

|デリバティブとIT

近年では、特定金融商品の派生商品であるデリバティブが証券会社で取引されています。これは金融商品の価格などを条件にした契約を指し広く利用されているものに、先物、オプション、スワップの3種類があります。先物とは、将来ある商品を売買する価格や数量をあらかじめ決定する契約です。オプションとは、将来ある商品をあらかじめ決めておいた価格で取引できる権利を売買する契約で、この権利は執行してもしなくても構いません。スワップとは、将来にわたって発生する利息を交換する契約です。同じ通貨で固定·変動など異なるタイプの利息を交換する金利スワップ、異なる通貨間で金利と元本を交換する通貨スワップ、異なる通貨間で金利のみ交換するクーポンスワップなどがあります。これら3種類以外にも、対象となる商品により債券デリバティブや金利デリバティブ、天候デリバティブなども利用されています。デリバティブのうち広く利用されるものは、株式と同様に取引所で取引されます。一方、顧客のニーズに合わせ条件を複雑にカスタマイスし、自社で組成(製造)したデリバティブを、顧客と相対取引で販売する場合もあります。この場合、証券会社が売り手で、投資家が買い手となります。組成の際には、証券会社の金融工学に強みを持つ専門家(クオンツ)が、商品特性や市場などの過去データを基に大量の計算によるシミュレーションを行って価格を決定し、契約を締結します。デリバティブの利用例として、リスクの軽減が挙げられます。保有している株式の「特定の価格で株式を売ることができるオプション」を少額で買うことで、金融商品価格の変動リスクを抑える効果があります。一方、上記の権利を売る場合、少額の収入を得られる反面、価格変動時に大幅な損失を被るリスクを抱えます。したがって、証券会社では、契約からどの確率でどれだけの支払いや収入が発生するのかを計算し、価格やリスクを評価する必要があります。新しいデリバティブの開発が進み、取引が急拡大する一方、内容が複雑になる傾向も出てきています。証券会社では過去や現在の市場などのデータを基に、日々デリバティブの価格や変動確率をシミュレーションにより算出し、適宜顧客にも報告しています。価格変動により、費用の支払いや受取り、追加担保の請求を行う場合もあります。加えて、顧客が契約期間全体にわたり、契約に見合った支払能力が見込めるかもあわせて評価します。同時に、自社が保有するデリバティブの価格やリスクを基に、将来を含め自社が過度なリスクを抱えていないかも計算する必要があり、リスク管理システムや会計システムと連携して管理を行っています。リスクを低下させるために金融商品をどう組み合わせるか、リスク自体の計算、取引約定の締結、契約終了までの取引先監視などは、ITによる可視化·効率化なしには実現不可能です。

図解:先物、オプション、スワップの概要

図解:デリバティブのシステム

 

【広告】Librus Tech Communityのお知らせ

Librus株式会社が運営する、システムエンジニアやプロジェクトマネージャーの方向けに展開するコミュニティにぜひご参加ください。「互いに助け合い、学び合う空間」をコンセプトに、システム開発に関するセミナーや勉強会をはじめ、案件や転職先のご紹介、相談対応も行います。エンジニア初心者の方や起業、現在フリーランスをされている方、フリーランスを目指している方も大歓迎です。

▼Slackコミュニティ入会フォーム
https://forms.gle/1D5duKwVJhm1vFb18

 

 

 

フィンテックカテゴリの最新記事