今回は元大手証券会社で1年目から社長表彰獲得などのめざましい成果をあげ、現在は株式トレーダーとして活躍するTさんにインタビューをさせていただきました。早速、これまでの経緯や営業手法についてお伺いしていきます。

Q:競争の厳しい証券マンになろうと思った理由を教えてください。

理由はいくつかあります。まず、給料が高いことや本物の富裕層に出会えることが魅力的でした。また元々株式投資に関心があったことや、新人でも成果に対して責任を持つことができ、営業推進上の裁量が大きいことも自分にとっては魅力に感じました。

証券マンを目指すにあたって、就職活動や金融知識の習得にはそれなりに苦労しましたが、結果としてうまく進めることができました。また目指している人に対して、あえて厳しいことを言うと、証券マンになるにあたってしっかりした自分のカラーや個性、主張、人生の目標などがないとなかなか将来性が見えない仕事でもあると思います。

Q:証券会社の営業はどのように進めるのでしょうか。

まず証券会社に就職した新人のほとんどは顧客の新規開拓をすることになります。私はある関西の大型支店に配属となったのですが、そこでは名刺の束が100枚×10個用意されていて、毎日1個(100枚)の名刺を交換し、社長の名刺を10枚獲得することを要求されます。

営業は電話もしくは飛び込みで行うのですが、飛び込みに関しては営業エリアを決められていて、そこを1件1件ひたすら訪問しました。エリアは〇〇1丁目など、極めて範囲が狭かったことが印象的でした。

飛び込み訪問では全く相手にされないことが当然なので、新人の自分にとっては辛い思い出でもあります。それでも1日3回行くなど、しつこく回り、1週間通い続けることもしました。また電話の場合は1日100〜300件の範囲で目標を決めて、ひたすら架電していました。

Q:徹底したローリング作戦ですが、口座開設にはどのように繋げるのですか。

ローリング作戦によって8割はキレます(笑)。でも2割の人は面白がってくれ、話を聞いてくれますし、名刺も交換してくれました。話を聞いてくれる人にはまず、「〇〇証券◯年目のXXです。〇〇地域の担当となりました。よろしくお願いいたします。」と挨拶をしました。そこから「株式や債券を持っていますか。」と聞きます。持っているとしたらその株式銘柄や債券の関連情報を定期的に提供するなどして、フォローを行っていました。

また重要な+αとして、証券から証券以外まで、とにかく困っていることをよく聞きました。まず、保険、事業の競合情報、不動産、株式などのカードを項目別に手作りして、経営者に困っていること、不安なことを選んでもらいます。そしたら次回のアポイントに向けて、宿題として持ち帰っていました。

Q:飛び込み営業の確度を上げるために、どのような工夫をしていたのでしょうか。

第一に、経営者をターゲットにした飛び込み営業では受付の方と仲良くなることを目指します。ひたすら訪問を行い、「いつもありがとうございます」などと伝えて、いい印象を持ってもらうことは大事ですね。そうすることで社長の車なども教えてもらうことができ、そこから在社の時間帯を推測することも可能となります。また新規で行く時は引き継ぎを装って訪問することなどもしていました。

それでも特に大企業の場合など、受付とリレーションを構築するのが難しい場合があります。その場合は営業部や経理部などどこでもいいから飛び込んで、社長は何時だったらいるかなど情報収集します。この時、怒られることは当たり前なので全く気にしません。ただ、マンションの場合はコンプライアンス上、問題があるため、オススメできません。手紙を筆ペンで書いて送ったりもしていました。

電話営業においては、特に地方などでは地銀のPOなど金融機関ファイナンス案件は恰好の材料でした。会社に電話して、担当に「銀行の件でお電話しました」などと伝えれば、先方はまず断れません。先方としては融資か何かかと思って電話に対応するのですが、実際は銀行の株式を買わないかと提案されるわけです。それでも、「銀行」の話に間違いはないため、あまり怒られません(笑)。そこで、100株でいいから付き合ってほしいと伝えるわけです。口座開設さえできれば、クレジットカードと同じで、フォローを続けるかぎり資金はどんどん入ってきます。

Q:経営者や医者などは証券会社にとって大口の顧客となりえると思いますが、それ以外の穴場のターゲットがあれば、教えてください。

まず地元の寺や神社ですね。住職と仲良くなれば、そこに寄付している方(高属性の見込み客)とも紹介によって仲良くなれる可能性が高まります。そのために、寺や神社が力を入れている祭りの実行委員をやったりして、とにかく寺や神社を通じて、その地域と仲良くなることを目指しました。

また、地銀を主要取引先としている企業の持株会もターゲットになりえます。最近は地銀の合併が頻繁になってきていますが、自前で持株会をやっておらず、地銀に任せきりにしている会社に対して、「地銀の合併とそれに付随するリスク(=不安)」があることを伝えて、証券会社で管理した方がいいのではないかと提案するわけです。

つまり合併が発表された地銀の取引先企業をターゲットに、持株会用の口座開設と株式の移管を提案する形です。当然、株式の移管が決まればそれだけで「口座開設」と「資金導入」になりますし、顧客が当該株式を売ろうとしたら、すかさず事業保険やファンドラップ、投資信託、債券などを提案して資産を持ち替えてもらうわけです。なお、節税ニーズと組み合わせて提案することも大事です(株の売却益は特別益になるから事業保険で決算対策になるなど)。この作戦も上手くいき、持ち替え提案まで持っていければ、うち半分は決まりました。

Q:結果として、新人の時はどれくらいの成果をあげることができたのですか。

1年目は6億円の資金導入を達成でき、社長表彰を獲得できました。

Q:これからの目標を教えてください。

現在のライフワークにもなっている株式のトレードを極めていきたいです。また知人の会社に投資を行ったりして、有望なベンチャー企業の支援などもこれから力を入れていきたいですね。