財務担当者のための、株主総会後の手続き まとめ

  • 2018.11.04
  • IR
財務担当者のための、株主総会後の手続き まとめ

<はじめに>

株主総会の運営はどの企業にとっても最重要課題です。特に上場企業では毎年、定時総会を行う半年以上前から膨大な労力を注いで準備に取りかかることが一般的です。なぜ、それほどまでにして厳正に総会を準備を行い、運営する必要があるのでしょうか。

その理由は,総会は、会社のオーナーである株主たちが集まって、自分たちの会社の重要事項を決定する場であるから、というのが模範的な答えですが、実際のところはせっかく成立させた総会決議が取り消されるのを防ぐこと、つまり決議取消の防止をするためと言えるでしょう。

今回はそうした総会決議の取り消しを防ぐためにも非常に重要な株主総会後の手続きについて説明します。

株主総会後の決済公告と登記

決算公告とは

貸借対照表などの計算書類を公告すること(世間一般に広く告知することを言います)を決算公告と言います。株式会社は、定時株主総会が終結すると遅れることなく決算公告をしなければならない、とされています。

その際、通常の会社の場合は貸借対照表を開示すれば足りますが、大会社の場合には、貸借対照表に加えて、損益計算書も開示しなければなりません。会社に決算公告の義務が課されているのは、会社の債権者に会社の財政状況を開示することによって、会社の債権者が不測の損害を被らないようにするためです。

公告が免除される場合もある

一般的に上場している会社は貸借対照表(大会社の場合は、貸借対照表と損益計算書)を開示しなければならないのですが、金融商品取引法上、有価証券報告書の提出義務が課されている会社については、決算公告しなくても問題ありません。

有価証券報告書とは、企業の概況や事業・設備会社の状況、財務諾表などの経理の状況などの情報が記載された書類で、貸借対照表や損益計算書よりも詳細な情報が盛り込まれています。

有価証券報告書は、一般に広く開示されますから、有価証券報告書を提出している会社であれば、貸借対照表や損益計算書を開示する必要はないとされたのです。

たとえば証券取引所に株式公開をしている会社は、有価証券報告書を提出するように義務付けられています。

そのため、上場企業の場合には決算公告をする必要はないということになりますが、実際にはIR情報として、自社ホームページに金融庁のサイト「EDINET」のリンクを貼るといった措置をとっている会社も多くあります。

どんな方法があるのか

決算公告は、官報による公告日刊新聞紙による公告電子公告3つのうちのいずれかの方法をとることが認められています。会社の公告方法は、定款で定めておくことができますが、そのうちの1つだけでなく、2つの方法で行うことを決めておくこともできます。

たとえば、官報と日刊新聞紙によって公告する、と定めておくことができます。

一方、複数の方法のうちのいずれかの方法で行う、といったあいまいな方法にしておくことはできません。

たとえば、電子公告か官報による公告のいずれかによって公告する、といった定め方はできません。

また、日刊新聞紙とは、会社法上は時事に関する事項を掲載している新聞紙のことであるとされていますが、全国紙でなくてもかまいませんし、夕刊でもかまわないとされています。

なお、定款で特に公告方法を定めていない会社は、官報によって公告しなければなりません。

公告方法を官報あるいは日刊新聞紙としている会社であっても、株主総会が終結してから遅れることなく電磁的方法で5年間にわたって、継続的に不特定多数の人に向けて情報を提供し続ける方法をとった場合には決算公告しなくてもよいとされています。

電磁的方法とは、たとえば、自社のホームページ上に情報を褐載する場合などです。この場合、貸借対照表(大会社の場合には損益計算書も必要)の内容を、自社のホームページ上に5年間掲載し続ければよいとされています。

登記事項を変更した場合には登記申請する

株主総会決議で会社の登記事項が変更された場合には、登記申請が必要です。会社の登記事項を変更した場合、変更したときから2週間以内に変更の登記をしなければなりません。

そして、登記申請の際には株主総会決議があったことを証明する書類として、株主総会議事録を登記申請書に添付します。

どんな添付書類をそろえたらよいのか

登記の申請を行う場合には、登記申請書の他に、申請内容が真実であることを証明する書類、及び申請者の申請権限を証明する書類の添付が必要です。

前述した株主総会議事録も添付書類の1つです。他にも、たとえば、定款の記載事項を変更した場合には、申請内容が真実であることを証明する書類の1つとして定款の添付が必要になます。

申請者の申請権限を証明する書類として、印鑑証明書の添付が必要です。また、申請を司法書士に委任する場合には、委任状も必要です。他にも申請内容に応じて、就任承諾書(取締役、代表取締役、監査役の就任時など)や裁判所の許可書などの添付が必要です。

また、取締役、代表取締役、監査役の就任・辞任・解任の場合には、株主総会議事録や取締役会議事録を添付します。本店や支店の移転や廃止時にも取締役会議事録の添付が必要になります(株主総会議事録が必要となる場合もあります)。

総会終了後は、登記申請に備える必要があるため、速やかに株主総会議事録を作成する必要があるといえるでしょう。

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株主総会の適正をチェックする制度

株主総会検査役は何をするのか

株主総会検査役とは、株主総会の招集手続き·決議の方法が適正に行われているかを調査する人のことで、たいていは法律の専門家である弁護士が担当しています。総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主は、株主総会が開催される前に、裁判所に対して株主総会検査役の選任の申立てをすることができます。

株主総会検査役選任の申立ては、株主だけでなく、株式会社側も行うことができます。申立てを受けた裁判所は、その申立てが適法に行われていない場合を除いて株主総会検査役を選任します。

選任された株主総会検査役は、調査した結果を、書面に記載するかCD-Rなどの電磁的記録に記録して、裁判所に提供·報告する義務を負います。

株主総会検査役から報告を受けた裁判所は、内容を把握し、必要に応じてさらに詳細な内容を報告するように求めます。

求めに応じてさらに裁判所に報告をした場合、株主総会検査役はその報告内容を記載した報告書の写しを株式会社と申立人(申立人が株主である場合)に交付します。写しの代わりにCD-Rなどの電磁的記録を交付することもできます。

裁判所が株主総会の招集命令を出す場合

裁判所は、株主総会検査役から受けた報告内容から、株主総会招集の必要性があると判断した場合には、その会社の取締役に対して、株主総会を招集するように命じる場合(株主総会招集命令)があります。また、株主総会検査役から報告を受けた調査の結果を、株主に通知するように命じる場合(調査通知命令)もあります。

株主総会招集命令と調査通知命令は、どちらかー方だけがなされる場合もあります。株主総会招集命令のみが出された場合には、取締役は株主総会検査役の調査内容を株主総会において開示する義務を負います。

一方、調査通知命令だけが出された場合には、その通知を受けた会社が自主的に株主総会を招集する場合もありますし、通知を受けた株主が訴訟などを起こすことも考えられます。

このように、株主総会検査役が選任された場合、株主総会の招集手統きや決議の方法の公正さが微底的に調査され、場合によっては株主総会を招集するように裁判所から命じられたり株主から訴訟を起こされる事態に発展することもあります。

こうした事態に陥らないように、株主総会の開催については、法に則って適正に行うように細心の注意を払う必要があります。

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反対株主の権利

株式買取請求権について

株式買取請求権とは、会社法によって反対株主に認められている権利で、自分が持っている株式を会社に買い取ってもらうように請求できる権利のことです。反対株主とは、株主総会でなされた決定に反対した株主のことですが、どんな決定でも反対すれば反対株主になる、というわけでありません。

その会社の事業のすべてあるいはー部を譲渡する、といった会社の根幹部分に関わる決定に対して、反対の意思を持っ場合に限られます。

さらに、株主総会当日に反対の意を表明しただけでは反対株主とは認められません。株主総会が開催される前に、反対することを会社に通知し、かつ株主総会において、反対する議決権を行使した場合に限られます。

株式買取請求権の行使が認められるケース

株式買取請求権の行使が認められるケースは会社法で定められています。

たとえば、会社の合併や分割株式移転や株式交換事業譲渡など、会社の組織再編の決定時に株式買取請求権を行使することができます。

会社の組織形態の変更や事業の譲渡については会社の行く末に関わる重大な事項の変更といえるので、反対株主には株式買取請求権の行使が認められているのです。

また、株式の種類についての変更がある場合にも、株式買取請求権を行使することが認められています。株式の種類の変更とは、たとえば譲渡制限がなされていなかった株式を譲渡制限株式に変更するような場合です。

自分が持っている株式が自分の意図していない、あるいは許容できない種類の株式に変更されたまま、回収の手段も与えられないとすると、自己の意にそわない状況になっても資本をその会社に投下したままでいなければならないことになります。そのため、株式買取請求権の行使が認められているのです。

なぜこのような権利があるのか

会社の根幹部分の変更や株式の種類の変更など、株主にとって重要な内容が変更される場合に、反対株主には株式買取請求権が認められますが、「このような面倒なことをしなくても、単に反対株主が出資していた株式の額について、会社が払戻しを行い、株主はその会社を退社してしまえばよいのではないか」と思うかもしれません。

しかし、株式会社では株主ヘの払戻しは原則として認められていません。これは、株主ヘの払戻しを認めてしまうと、会社の組織変更や株式の種類の変更があるたびに、その会社の財産が減少してしまうことになり、取引先や債権者に不測の損害をもたらすからです。

もっとも、株主総会では資本的多数決が採用されており、株主総会での決議によっては、自分の意に沿わぬ方向に会社が進む場合も出てきます。そのような状況になってもまだ自身の資本を回收する手段がないのでは、株主は安心して資本を投入できなくなります。そのため、反対株主に不利益が生じないように、株式買取請求権が認められているのです。

株式買取請求権を行使するには

株式買取請求権を行使するには、反対株主が株式買取請求権を行使するかどうかを判断する期間が必要です。そこで、会社は、株式買取請求権を行使できる事実の効力が発生する日の20日前までに、株主に通知や公告をしなければならないとされています。

株式買取請求権を行使する反対株主は、この20日間前から効力が生じる日の前日までの期間に自分が持っている株式の種類を明らかにした上で請求権を行使しなければなりません。

たとえば、事業譲渡に反対した株主が株式を市場で売却することを考えたとします。その際に、とりあえず会社に株式買取請求権を行使しておいて、市場の株価と比較して自分に有利な価格を提示した相手と取引を行おうと考え、有利な価格だった市場で売却した場合、この株主が会社に行った請求を撤回することは可能なのでしょうか。

もし、請求権を行使した株主がー方的にその行使を撤回できるとすると、請求権を濫用する反対株主が増える恐れがあります。このため、株式買取請求権をー度行使した株主は、会社が承諾しない限り、それを撤回することはできないことになっています。

株式の買取価格はどうなるのか

株式買取請求権を行使する際に問題となるのは、その株式の買取価格がいくらなのか、ということでしょう。この買取価格については、会社は公正な価額で買い取らなければならない旨が定められているだけで、法令上、具体的なことについては、特に定められていません。

会社が通知・公告を行って、その期間中に反対株主が株式買取請求権を行使した場合、最終的に会社がその株式を買い取る価格がいくらになるか、と言う点については、結局、その株主と会社の間の交渉次第ということになります。

交渉ですから、それぞれの言い分を譲歩しながら、折り合いをつけていくことになりますが、どうしても合意に至らない場合も出てきます。そのような場合には、最終的には裁判で決着をつける、ということになります。

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決議に問題があった場合

どんな方法があるのか

株主総会の決議に関する訴訟は、株主総会決議不存在確認の訴え株主総会決議無効確認の訴え株主総会決議取消の訴え3種類が用意されています。

いずれの訴えが提起された場合でも、被告(訴えられた者)は会社となります。

決議に問題があった場合には、その程度に応じて、この3種類のうちのいずれかの訴訟が提起されることになりますが、それぞれの訴訟は対象とする問題の性質に違いがあります。

株主総会決議不存在確認の訴えとは「不存在」とあるように、おもに株主総会が存在していなかったにも関わらず、さも総会があったかのような外観が作られている場合に提起されます。株主総会が存在していなかったことが認められるとその株主総会で成立したとされる決議はなかったものとして扱われることになります。

株主総会決議無効確認の訴えとは、株主総会自体は開催されたと評価できるものの、そこでなされた決議が法令違反であるような場合に提起されます。法令違反の決議であったことが認められると、その決議は無効となります。

3種類の訴えの中で比較的問題の程度が軽い場合に利用するのが株主総会決議取消の訴えです。取消の訴えですから、この訴えが認められたとしても株主総会が存在していなかったことになったり決議が無効とされることはありません。株主総会決議取消の訴えの対象となった決議は、訴えを起こされる前にはー応有効なものとして成立しています。「すでに有効なものとして成立している決議に問題があるため、取り消ししてほしい」と主張するのが株主総会決議取消の訴えです。

この訴えが認められると、有効に成立していた決議が、取り消されて無効なものとして扱われることになります。

不存在・無効とされる場合

株主総会決議不存在確認の訴えとは、総会決議が存在していないことについて確認を求める訴えです。同様に、株主総会決議無効確認の訴えは、総会決議が無効であることを訴えによって確認するものです。

これらの確認の訴えは、株主総会が不存在であることや決議が無効であることを確認することについて正当な利益(これを訴えの利益と言います)を有する人であれば誰でも訴えを提起することができます。

また、訴えを提起できる期間(提訴期間)についても、特に制限はなく、訴えの利益がある限りいつでも提起することができます。

たとえば、株主総会の決議が存在していないにも関わらず議事録には決議が存在しているかのように記載されているような場合、株主総会決議不存在確認の訴えが提起されます。また、株主総会の招集通知がなされたときに、通知されなかった株主が多数いて実質的に招集されなかったに等しい状態だったような場合にも、株主総会決議不存在確認の訴えが提起されます。

一方、株主総会決議無効確認の訴えは、株主総会は開催されているものの、その総会の決議において、たとえば詐欺再生罪(民事再生法255条)で1年前に罰金刑に処せられた者を取締役として選任する決議が承認されたような場合に、提起されます(会社法は、詐欺再生罪などのー定の罪を犯して刑罰を処せられてから2年を経過していない者は会社法で取締役になることができないことを規定しています)。

取消の訴えが提起される場合

株主総会決議取消の訴えが提起され、対象となった決議が取り消されると、すでに有効な決議として成立していた決議が、取り消され、遡って無効となります。この訴えを提起できる人は、株主、取締役、清算人です。会社が監査役設置会社の場合には監査役、委員会設置会社の場合には執行役も訴えを提起できます。

提訴できる期間は限定されており、訴えの対象となる決議がなされた日から3か月以内に提起しなければなりません。

株主総会決議取消の訴えの場合には、訴えが認められるとその決議は取消しによって遡って無効となり、その効力は原告と彼告の間だけではなく、その他の人(第三者)にも及びます。

株主総会決議取消の訴えを提起することができる原因を決議取消事由と言います。会社法は、決議取消事由として次の3つの瑕疵(問題点)を挙げています。

①株主総会招集の手続き·決議の方法に関して法令·定款に違反し、著しく不公正な場合

②株主総会の決議の内容が定款に違反している場合

③決議の際に特別利害関係人である株主が議決権を行使したために著しく不当な決議がなされた場合

①は、たとえば株主総会の招集通知を行った際に、通知し忘れた株主がいたような場合です。②は、定款で取締役の数を5人と定めてある会社で7人の取締役を選任したような場合です。③は、職務の執行に関し不正行為を行った取締役を解任する議案の採決において、その取締役が株主として議決権を行使したために否決されたような場合です。

なお、裁判所は、株主総会決議取消事由にあたる事実があった場合でも、その事実が重大ではない場合で株主総会の決議にも影響を与えていないと判断した場合には、その株主総会決議取消の訴えを棄却(裁量棄却と言います)することもあります。

いかがでしたでしょうか。コーポレートガバナンスに対する社会的な注目も高まる中で、上場企業に限らず、ベンチャーを含む非上場企業でもIRやSRの考え方は広がっており、特に株主総会の実務は非常に重要な役割を担っています。

株主総会や決算報告など、企業のIRやコーポレートガバナンスにお困りの方はぜひお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

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