株式総会の事前準備 決定版

  • 2018.11.04
  • IR
株式総会の事前準備 決定版

<はじめに>

株主が理解しやすい株主総会を開催し、また説明義務違反に問われるリスクを回避するためにも株主総会の事前の準備は欠かせません。

以下に株主総会の事前準備におけるポイントを解説します。

シナリオを作成しよう

株主総会は株主が議決権を行使する重要な場ですから、報告事項についてはわかりやすく報告し、質問に対しては丁寧に対応し、全体の議事の進行を滞りなく進める必要があります。

事前準備を怠ると時間配分のバランスが悪くなり、重要な事項について審議を尽くせなかったり、早々に質疑応答の時間を打ち切らなければならなくなってしまう場合があります。

せっかく開かれた株主総会をめざしていても、こうなってしまってはかえって会社のイメージが悪くなってしまいます。

株主総会当日に議事をスムーズに進めるためには、事前に総会当日の議事の進め方を所要時間と共に考えてシナリオとして残しておくとよいでしょう。

こうすることで、そのシナリオをペースメーカーとして、当日の議事をバランスよく進行することができます。

リハーサルは非常に重要

株主総会を意義あるものにするためには、当日行わなければならない説明や報告を株主にわかりやすく行うことが重要です。

そのためには、議事を進める議長や説明·報告を行う取締役など、株主総会の進行上重要な役割を果たす人が、全体の流れを頭に人れた上で、事前に練習しておくことが大切です。

また、株主総会で表立って話をする人だけでなく、株主が来場した際に対応する受付や案内役、資料をスクリーンに映し出す場合に使う機器類や照明、音声の調節を担当する人など、当日会場で株主総会に関わる人も、全体の流れと実際の動きを把握しておくことが望まれます。

このように事前にリハーサルをしておくことで、当日間題となりそうなことを事前に洗い出して対策を打つことも可能になります。

仮に当日にシナリオとは異なることが起きた場合でも一度全体の流れを体験していれば、どうすれぱよいのかを冷静に考え、落ち着いて対応することができます。

なお、リハーサルを行う際には、全体の時間配分に注意した上で、それぞれの役割の特徽をおさえておくとよいでしょう。

具体的には、議長の場合であれば議長が有する権限を確認した上で、総会全体の秩序と進行の管理の仕方に注意して行います。

議案や報告に関して質問などに答える役員は、自分が負っている責任義務を理解した上で、どこまで対応しなければならないのか、また重要な事項は何か、を十分に把握しておく必要があます。

また、議事を進める議長と各議案の説明・受け答えなどを担当する役員との連携もスムーズに行えるようにそれぞれの役割を確認しておきます。

受付や案内役あるいは警備担当者は、株主の確認方法や不審者ヘの対処法などを事前に確認しておくようにします。

顧問弁護士にチェックしてもらおう

大規模な会社は、たいてい顧間弁護士に依頼して会社の事務局として株主総会に臨席してもらうようです。

顧間弁護士の役割は、株主総会の議事の進行や議案の内容、答弁を担当する役員の受け答え、採決の状況など、株主総会全体を法的な観点からチェックして、株主総会の運営と株主による決議が適法に行われるように助言を行うことです。

場合によっては、役員の答弁の際に、不足している内容などを補足する役割も果たします。

また、議長が議事進行上判断しなければならないさまざまな状況において、複雑で判断が難しい局面には、議長の判断が適法になされるように顧問弁護士が助言を行う場合もあります。

顧問弁護士にも、事前にリハーサルを行うときには参加してもらうようにして、予め疑間点や問題点が出てきたときにはそのつど確認しておくと、株主総会当日に堂々と対応することができます。

想定問答を用意しておこう

株主総会の事前準備として、シナリオを作成すること、リハーサルを行うこと、願問弁護士に事前に法的観点からチェックしてもらうこと、担当役員の割り振りを行うことなどを説明してきました。しかし、株主総会を滞りなく進め、より開かれた株主総会とするためにー番大切なことは、株主から出される質問に誠実かつ明確に答えることです。

そのためには、予め質問されることが想像できる事項を洗い出しておき、明確な回答を作成しておくことが必要です。

もちろん、専門用語や業界用語を並べ立てたり、ただ美辞麗句を並べただけで何の答えにもなっていないような回答例を作成しても意味はありません。

質問は、疑問点を理解したいから出されるもので、決して議事の進行を遅らせるために行っているわけではありません。

総会屋のような株主は別として、通常の株主はその会社の業績について真剣に考えているからこそ質問をしており、そもそも興味がない株主であれば質問などしないでしょう。

また想定問答を作る際には、このことを肝に銘じて、質問した株主だけでなく出席した株主全体が理解できるようなわかりやすい言葉を使った誠実な回答となるように作成するべきです。

想定問答を作成する際には、あらかじめ各部門に告知して、問題点や質問されそうな内容をリストアップしてもらい、対策案なども出してもらうようにすると実効性のある想定問答を作ることができます。

想定問答はリハーサル前には完成させておき、リハーサルでは株主役に質問させ、担当役員が実際に回答してみて、顧間弁護士に法的に問題ないか確認してもらうようにするとよいでしょう。

役員は株主総会での答弁に向けてどのような準備をするべきか

株主総会の準備段階で役員のすべきことは、担当役員以外は特に具体的なものがあるわけではありません。

しかし、一歩引いた位置から全体の進行状況を把握して、当日議事の進行役となる議長がスムーズに職務を行うことができるように支援するといった行動が期待されます。

議案の説明や報告、質疑応答に対応する役員は、自分の担当している議案や報告事項について十分に把握し、想定される質問に対する回答も考えておくようにします。

他の役員の担当する分野の情報が必要な場合には、その役員に予め確認しておくなど、いつでも連携をとれるようにしておくことも大切です。

なお、担当役員であってもそうでなくても、また担当する範囲外の内容に関しても、その会社の役員である以上は、尋ねられたときには即答できるようにしておくのが望ましいことは言うまでもありません。

少なくとも株主総会当日までには全議案・報告事項についてはー通り目を通しておくベきでしょう。

答弁役員の心得

株主総会において、役員は株主から質問をされた場合には、質問内容について説明する義務を負っています。

役員とー言で言っても、それぞれ専門は異なりますし、実際に説明をする際には、役員ごとに説明義務の範囲も異なります。

説明義務については法律で定められていますが、議長として気をつけなくてはならないのは、法律上説明義務のある質問がなされたときに適切に回答しなかった場合には説明義務違反となり、最悪の場合には総会決議取消の訴えを起こされることがあり得るということです。

したがって、議長は、どういった質問にどの役員がどの程度説明をしなければならないのかを頭に入れておくか、顧問弁護士の助言を得ておいて、当日各質問に対して適切な役員を指名して説明させるように議事を進行していかなければなりません。

これはいきなり当日にできることではありませんから、当然、事前に役回りを決めておくことになります。時間的に余裕がある場合には、想定し得るすべての具体的な質問について、それぞれの担当役員を決めて回答案を考えておくのが理想と言えます。

ただ、想定し得る質問をすべて考えたつもりでも、やはり想定外の質問が出される可能性はあります。したがって、質問内容によって範囲を分けてそれぞれの範囲について担当する役員を決めておくのが現実的な対応といえるでしょう。

事前質問への役員の対応

事前質問とは、株主が、株主総会当日よりも相当の期間前に、特定の事項について会社に対して説明を求めることを言います。

事前質問は会社に対して書面で通知されますが、書面の株式などについては特に法律で規定されていません。

実際に株主が会社に対して質問をして、役員がその質聞に回答するのは、株主総会当日に行われる質疑応答のときです。株主が事前に質問をしただけで株主総会当日に質問をしていない場合には、株主総会の場でその質問に対して役員が回答する必要はありません。

しかし、株主総会当日に役員が回答する義務を負っていないにも関わらず、事前質問は頻繁になされています。もちろん、単に会社に対して尋ねたいことがあって質問した、という場合もあります。

ただ、たいていの場合には、株主総会の当日にこのような質問をしますから、「当日に回答してください」という意味で、株主は事前質問をしています。

このように、事前質問には株主総会当日の質問内容を会社に知らせる事前通知の意味があります。

役員の対応義務はあるのか

株主総会当日に株主からー定の事項について質問を受けた場合、担当役員はその質問内容について、原則として回答しなければなりません。

その場合、すべての質問に対してその場で回答しなければならないわけではありません。

質問された内容が株主総会の目的事項に関連しない事項であった場合や正当な理由がある場合には、役員は説明しなくてもよいとされています。

役員はどんな対応をすればよいのか

前述のとおり、株主総会の場で事前に受けていた質問を実際に株主からされた場合には調査が必要である、という理由でその場での回答を拒否することはできなくなります。

事前質問をした株主が株主総会当日に出席するかどうか、出席しても実際に質問するかどうかは、その時になってみないとわかりません。

仮に株主総会の開催時刻の時点で事前質問をした株主が出席していないことがわかったとしても、その株主が総会の途中に会場に到着し、質問をしてくることもあり得ます。

したがって、事前に質問が寄せられている場合の対応としては、すべての質問に対して株主総会までの間に回答を準備しておくのが現実的です。

回答を準備しておけば、株主の出席状況や質問の有無を気にすることなく、他の議事進行に集中することができます。株主総会当日は、各議案の説明に入る前に、事前質問に対してまとめて回答しておくとよいでしょう。

取締役等の説明義務

株主が株主総会で議決権を行使するにあたっては、不明な点を質問した上で説明を受けなければ、判断できない場合があります。

質問しても説明を受けられなければ、権利を行使する前提となる情報が十分に確保されていないことになります。

そこで、株主には質疑応答の機会が保障されています。株主は質疑応答の機会を保障され、取締役は説明義務を負うということです。

したがって取締役は、株主総会当日に株主からー定の事項にっいての説明を求められた場合には、これに応じなければなりません。

取締役等がこの説明義務を果たさなかった場合には、株主総会の決議が取り消される場合もあります。

説明義務の範囲

取締役等が説明しなければならない事項としては、株主総会でとりあげられる報告事項と決議事項があります。

このうち報告事項とは、会社から株主に対して報告しなければならないとされている事項で、決議事項とは、株主総会で議案としてとりあげる事項です。

最終的には、この決議事項について、株主総会で株主が賛成か反対かの意思表示を示すことになります。

取締役等は、報告事項にっいて説明を求められた場合には、株主に内容を理解してもらえるようにわかりやすく説明する義務があります。

一方、決議事項についての説明を求められた場合には、株主が議案について賛成するのか反対するのかを決定できるように説明する義務があります。

説明義務の程度

取締役等には報告事項と決議事項についての説明義務があることは前述したとおりですが、実際にはどの程度まで説明をしなければならないのでしょうか。

この点について報告事項に関する質問を株主からされた場合で考えてみましょう。

この場合、取締役等の回答によって、株主が質問事項について合理的な理解を得た上で、報告を承認するかどうかを決められれば、質問の目的は達せられたと考えられるでしょう。

したがって、報告事項に関する質問について取締役等が説明しなければならないのは、株主が報告事項について合理的に理解するために必要な程度、ということができます。

一方、決議事項に関して株主から質問された場合には、株主が議案に対して賛成するか反対するか、という意思決定を合理的に判断するために必要な程度の説明が求められます。

なお、株主が合理的な理解や判断をするために必要な程度とは,株主や取締役等の主観で判断されるものではありません。

判例によると、合理的な平均的株主を基準として考えるもの、とされています。つまり、取締役等に求められる説明の程度とは、合理的な平均的株主が、報告事項や決議事項につて合理的理解や判断をするために、客観的に必要だと考える程度、ということになります。

報告事項の説明義務の範囲

取締役は株主総会でー定の事項を株主に対して報告しなければなりません。取締役が株主総会で報告する事項(報告事項)は、事業報告の内容と計算書類の内容です。

報告事項にっいて株主が説明を求めた場合に取締役等が説明Lなければならない対象は、上記の事業報告と計算書類だけでなく附属明細書も加えられます。附属明細書には事業報告を説明するものと計算書類を説明するものがありますが、

説明対象となります。いずれも報告事項の中で、前回とは大きく異なる数字や項目があった場合、目立ちますから、株主から質問されることも多くなります。特に重要な変化などにっいては附属明細書でも補足している場合が多いのですが、それでも株主から質問されることは多いと言えます。取締役等はこうした事項や数字にっいて質問されたときには回答する義務がありますから、大きな変化が事業報告や計算書類に褐載されていることがわかっている場合には、事前に回答を用意するようにしておいたほうがよいでしよう。

附属明細書との関係

附属明細書はもともと事業報告や計算書類に記載されている内容を補足する意味合いを持つものです。重要なものについての補足が記載されているのですが、そこで記載されている内容は、株主に理解してもらうために書かれているものです。実務上、株主総会において取締役等が報告事項について説明する場合にも、この附属明細書に記載されている程度の内容を説明すれぱ足りるとされています。

したがって、ここでは、附属明細書に記載されている内容について、事業報告の附属明細書と計算書類の附属明細書に分けて見ておきましょう。

・事業報告の附属明細書

事業報告の附属明細書には、事業報告の内容を補足する重要な内容を記載します。非公開会社と公開会社では扱いが異なります。非公開会社の場合には、特に記載すべき内容は定められていません。公開会社の場合、他の会社の業務執行取締役·執行役·業務を執行する社員などの兼務の状況とその明細も記載します。他の会社の事業が同ーの部類であるときは、その旨を付記します。

・計算書類の附属明細書

計算書類を補足する附属明細書には、貸借対照表·損益計算書·株主資本等変動計算書·個別注記表に記載された重要事項を補足する内容を記載します。

決議事項の説明義務の範囲

株主総会当日に決議事項について株主から質問された場合、株主が議案に対して賛成するか反対するか、という意思決定を合理的に判断するために必要な水準の説明が求められます。

つまり、当日とりあげられる議案のうち株主の決議を要する事項について、株主から質問があった場合には、株主が賛否を決めるのに必要な水準の説明をしなければなりません。実際にどの程度の説明をしなければならないのか、という点については、よい判断基準となるものがあります。

それは、書面によって議決権を行使できる会社が株主総会の招集通知に添付する株主総会参考書類を基準とする方法です。具体的には、株主総会参考書類に記載する内容と同程度の説明をすれば足りる、と考えられます。

株主総会の当日に株主から質問を受けた取締役等が説明する内容も、この株主総会参考書類に記載している内容と同程度の範囲内で説明すれば、株主は賛成・反対のいずれにするかを判断することはできるはずです。したがって、決議事項に関する取締役等の説明義務は、株主総会参考書類と同程度の範囲について、負っていると考えるとよいでしょう。

どんな場合に拒絶できるのか

株主総会当日に株主から報告事項や決議事項にっいて説明を求められた場合、原則として取締役等はこれに応じる必要がありますが、すベての質問に対して回答することを義務付けられているわけではありません。たとえば、株主総会の目的事項に関連しない内容についての説明を求められた場合には、説明を拒絶できます。また、説明すると株主共同の利益を著しく害してしまう場合も、説明を拒絶することができます。

それ以外の場合でも、その場で回答しないことについて、正当な理由がある場合には、説明を拒絶することも可能です。この正当な理由については、法務省令で規定されています。

具体的には、その質問に対して回答すると、質問をした株主を除く、その他の者の権利を侵害することとなってしまう場合です。権利を侵害される者には、株式会社自身も含まれます。

また、同じ株主総会内において実質的に同じ事項について繰り返し同じ質問がなされた場合も、説明を拒むことができます。

質問された内容に回答するためには調査が必要な場合も、その場で回答することを拒絶することができます。なお、こうした理由以外にも正当な理由と認められる場合には、説明をしなくてもよいとされています。

このように、説明を拒絶できるケースにあてはまる場合には、たとえ取締役等が説明しなかったとしても説明義務違反とはなりませんから、そのことが理由となって株主総会の決議が取り消されることはありません。

いかがでしたでしょうか。コーポレートガバナンスに対する社会的な注目も高まる中で、上場企業に限らず、ベンチャーを含む非上場企業でもIRやSRの考え方は広がっており、特に株主総会の実務は非常に重要な役割を担っています。

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