今回はプロジェクトを進めるにあたり避けては通れないステークホルダーとの関係のマネジメントについての記事です。ステークホルダーとは、「プロジェクトの任意の局面に利害関係を持つか、影響を及ぼすか、影響されるか、又は影響されると自覚する人、グループ又は組織」を指します。

ステークホルダーマネジメントの重要性

目標設定時からステークホルダーマネジメントが重要になります。プロジェクトをとり巻くステークホルダーにはプロジェクトに対する個別の関心があります。各ステークホルダーの関心を明らかにし、プロジェクトマネージャがこの関心に沿う活動ができていれば、そのステークホルダーはプロジェクトの目的目標達成を応援してくれます。しかし、プロジェクトマネージャが各ステークホルダーの関心を理解せずさらにそれに反する活動をすれば、そのステークホルダーはプロジェクトの目的·目標を阻害してくることでしょう。

このように、プロジェクトの目的·目標達成とステークホルダーの利害は密接に関係しています。ステークホルダーマネジメントの出発点は「ステークホルダーの特定」「ステークホルダーの分析」、これらの情報をまとめ、どうステークホルダーに対応していくかを明確にするための「ステークホルダー登録簿」の作成です。次から詳しく見ていきましょう。

ステークホルダーを特定する

プロジェクト憲章が承認され、プロジェクトマネージャが任命されたら、プロジェクトマネージャはステークホルダーを特定しましょう。ステークホルダーとはプロジェクトに影響を受けるか、または影響を及ぼす個人、グループまたは組織です。ステークホルダーはプロジェクトに直接的に関係するステークホルダーから間接的に関係するステークホルダーなど様々です。

プロジェクトのステークホルダーとしてどのような個人やグループ、組織がいるかを洗い出してみましょう。その際、気をつけなければならない点が「近視眼的にならない」ということです。つまり自分と直接的に関わる個人や組織だけにフォーカスしないことが重要です。例えば、プロジェクトの成果物が法令に関わる可能性があれば、監督官庁や組織内の内部体制管理や法務を行う組織がステークホルダーになるかもしれません。

プロジェクトの成果物が近隣住民に影響を及ぼす可能性がある場合なら、住民もステークホルダーになりえるかもしれません。プロジェクトに直接関与している個人やグループ、組織だけではなく、プロジェクトによって間接的に影響を受けたり、影響を与えるステークホルダーも特定していきましょう。

ステークホルダーの分析

ステークホルダーの特定が終わったら、ステークホルダーの分析をしていきましょう。ステークホルダー分析は、今後のステークホルダーマネジメントの一対応を行う上で、ステークホルダーの傾向を明らかにしステークホルダー対応の優先順位を導きだすために重要です。

ステークホルダー分析といってもあまり難しく考えないように、最低限必要な分析方法をお伝えします。ステークホルダー分析には「ステークホルダー分類マトリックス」が役に立ちます。縦軸に「プロジェクトへの権限」、横軸に「プロジェクトへの興味·関心」を設定し、それぞれの軸に「高」「低」を設け、2×2のマトリックスを作りましょう。このマトリックスに事前に特定したステークホルダーを配置していきます。

例えば、プロジェクトスポンサーは、プロジェクトへの権限も興味·関心も双方高いので、「権限-高」「興味·関心-高」が交わるボックスに配置します。また、経理部門はプロジェクトに対する権限や権力は持っていないが、あまりコストをかけてほしくないため興味関心が高かった場合、「権限-低」「興味·関心-高」が交わるボックスに配置します。この分析により、ステークホルダーを分類することができました。分類することで、今後のステークホルダーへの対応の優先順位付けや対応方針が明確になります。

ステークホルダー分類マトリックスをもう少し詳しく見ていきましょう。「権限-高」「興味·関心-高」のステークホルダーには今後優先的にマネジメントをしていきます。その時の対応方針としては「重点的に関係管理する(最大限の努力)」です。権限があり興味·関心も高いステークホルダーですから関係管理に努め、プロジェクトの目的·目標達成を応援してもらえるようにしていかなければなりません。

次に優先となるのは「権限-高」「興味·関心-低」または「権限一低」「興味·関心一高」のステークホルダーへの対応です。「権限-高」「興味·関心-低」の対応方針は「要求を満足させつづける」です。権限があるステークホルダーですので、何かのきっかけでプロジェクトの目的や目標達成に対して影響を及ぼす可能性があります。マイナスの影響を防止するために当該ステークホルダーの要求を満足させ続け、プロジェクトを支援してもらえるようにしなければなりません。

また、「権限-低」「興味·関心-高」の対応方針は「情報提供·報告をしつづける」です。権限はないものの、興味·関心にそぐわない場合、プロジェクトの目的·目標達成の足を引っ張りかねません。これを防止するために情報共有しつづけ、プロジェクトを応援してもらえるようにしていかなければなりません。

優先順位が最も低いのは「権限-低」「興味·関心-低」です。この対応方針としては「モニターする(最小限の努力)」です。モニターするとは状態を監視することです。対応の努力は最小限にとどめますが、常に気をとめておくということです。例えばプロジェクト開始時に経理部門はプロジェクトへの興味·関心が薄くても、支出が増えてくれば興味·関心心が高くなるかもしれません。ステークホルダーの権限や興味·関心はプロジェクトが進むことで変わる可能性があります。モニターすることを忘れないことが重要です。

ステークホルダー登録簿とは?

ステークホルダー特定と分析が終わったら、それらの結果をステークホルタ一登録簿としてしっかりと明文化しておきましょう。最低限明文化すべき内容を紹介します。ステークホルダー登録簿の最低限の内容をおさめたフォーマットです。「名前/組織名」「部門」「役職/役割」「連絡先」などの基本情報を明確にします。「関心事項」にはステークホルダーの公式の「関心事項」を記載します。例えばマーケティングの山田さんなら売上拡大、経理の佐藤さんならコスト削減など、ステークホルダーとの対話や文書等で得られる公式な関心事項をまとめます。この「関心事項」はプロジェクト憲章の「主要ステークホルダー」に記載する「関心事項」と基本同じになります。

「影響度」「興味関心度」にはステークホルダー分類マトリックスで得られたそれぞれの高·低の情報を記載します。「賛否」にはステークホルダーとの対話や文書などで得られる情報をもとに、各ステークホルダーがプロジェクトの目的·目標やプロジェクト活動に対して「賛成」「中立」「反対」のどれかを明確にします。これらを信号機のように賛成=線、中立=黄、反対=赤で表す場合があります。

「対応内容」には、ステークホルダー分析で得られた対応方針をもとに具体的にどのような対策を講じどのように対応していくのかの戦略を明記します。その際、賛成の人には賛成を維持するように、中立の人には賛成になってもらえるように、反対の人には中立になってもらえるようにどうすればいいか、の視点を持って戦略を記載していきます。

ステークホルダー分析や登録簿で気をつけるべきこと

多くの企業へのプロジェクトマネジメント研修やプロジェクトマネジメント支援でよく尋ねられることがあります。それは「ステークホルダー分析やるべきか」「ステークホルダー登録簿の管理はどうするべきか」の2つで確かに、ステークホルダー分析や登録簿の内容はデリケートな内容です。以下に対策をお伝えします。ステークホルダー分析は1人で分析すると自分では気づかないステークホルーダーがいる場合もあります。それを防止するために複数で分析する場合があります。取り扱う情報がデリケートなだけに、プロジェクトに直接関わらない頼のおけるプロジェクトマネージャと行う、または信頼のおけるプロジェクト関係者と当事者以外の分析を行い、その意見をもとに改めて自分で分析を行うことをお勧めしています。

ステークホルダー登録簿の管理ですが、「名前/組織名」「部門」「役職/役割」「連絡先」、公式な「関心事項」の項目までをプロジェクト組織内の公開覧料とし、それ以外の項目のデリケートな情報はプロジェクトマネージャのみが確認できるよう厳重に管理しましょう。この管理が徹底できれば、例えば、ステークホルダー登録簿に各ステークホルダーの非公式の関心(例えば、「新製品の販売で売上が上がることで昇進したい」)や各ステークホルダーの特徴など項目を追加することができ、今後のステークホルダーマネジメント高度化のための基本情報を完備することができるでしょう。