WBSを描こう〜「要素」への細分化〜

  • 2020.03.21
  • PM
WBSを描こう〜「要素」への細分化〜

PMは大きな目標の達成を「要素」に分解してマネジメントします。今回はそれに関係するWBSについてです。是非ご一読ください。

目標達成の要素を導くWBS とは一

皆さんは大きなステーキを食べる時にどのように食べますか? 多くの人はナイフとフォークで細かく切って、ひとつひとつ食べると思います。なぜた。大きなステーキは一度に食べられないからです。

実はプロジェクトも同じです。プロジェクト憲章で設定した目標やスコーマ記述書で定義したプロジェクト範囲を一度で達成することは困難です。目極や作業範囲を「要素」に細分化し、ひとつひとつ達成することで、大きな目標を達成していきます。

この目標を要素に細分化し「何をすべきか」を導く技術をWBS (Work Breakdown Structure:作業分解図)といいます。下の図は単純化したWBSの例です。「車」という最終目標に対し、その最終目標を構成している要素に分解しています。

最終目標を細分化したものを「成果物」といいます。WBS ではさらに成果物を構成している要素に分解します。これを一般的に「要素成果物」といいます。最後に、要素成果物をどう作り出すかを明らかにする「活動」を記載します。このように要素に分解していくことを一般的に「要素分解」といいます。

WBS では、最終目標をレベル1、成果物をレベル2、要素成果物をレベル3、活動をレベル4などと表現することもあります。また一般的にレベル3の要素成果物を「ワークパッケージ」、レベル4の活動を「アクティビティ」と呼ぶことがあります。

どのくらいのサイズに要素分解すればよいのかという質問が常にあります。例えばステーキを細かく切って食べたい人もいれば、大きく切って食べたい人もいます。細分化が細かすぎるとこの後の進捗管理に工数がかかりますし、細分化が大雑把すぎると進捗情報が見えにくくなります。何度かプロジェクト経験を経て自分に合ったサイズを見つけていきましょう。

WBS作成で重要なこと

既述の通り、WBSでは目標達成のために具体的に「何をすべきか」を導いていきます。WBSの要素分解の仕方でプロジェクトの作業内容が大きく変わってきます。

例えばパソコンを作るプロジェクトの場合、成果物に「キーボード」があったとしましょう。このキーボードを自社で作り組み立てるのと、外注先企業から納入して組み立てるのでは、その後の要素成果物の内容や活動が大きく変わってきます。

つまり WBS作成の段階から目標達成するまでの計画や未来の活動のシナリオが大きく変わってくるのです。WBSは自社の経営リソース、プロジェクトの期間、コストなどを考え、社内·社外の有識者とともに作成することが望ましいです。大きなプロジェクトになればなるほど、プロジェクトマネージャの過去の知識や経験では対応できない成果物や要素成果物が目標達成のために必要になります。

その時に重要なのは成果物や要素成果物の専門的知識や経験を持った自社または関係会社の有識者です。このような場合、プロジェクトマネージャに求められるのは、有識者との議論を活性化させ、有識者から専門的情報を聞き出し、WBSにまとめていくファシリテーション能力です。

次に、スコープ記述書にもあったように、プロジェクトには成果物のスコープの他にプロジェクトマネジメントのスコープもあります。要素分解をするのは成果物に限ったことではなく、プロジェクトマネジメントの範囲も要素分解しWBSにその要素成果物をしっかりと記載しましょう。

わかりやすいところでは、プロジェクトマネジメントでどのような計画書類が完備されるのか、どのような会議や報告書があるのか、そしてそれに必要な活動とは何かなどの要素分解です。

WBS の作り方

会議の中で有識者とWBSを作成する一番単純な手法をお伝えします。プロジェクトマネージャが付筈とペンを持ち、有識者から最終目標を構成する要素を、ファシリテーションを通じて聞き出していきます。プロジェクトマネージャは構成要素を付篭に書き、壁やホワイトボードなどに貼っていきます。

要素を出し終わったら各要素を最終目標(レベル1)、成果物(レベル2)、要素成果物(レベル3)に整理しWBS の形にしていきます。その後、各要素成果物を生み出すための活動(レベル4)を有識者とともに考え、貼っていきます。最後に、これらの付釜の階層構造をプロジェクトマネジメントツールなどにデータ化したり、ドキュメント化したりしていきます。

この会議は何度か繰り返すこともあります。計画段階でベストなWBS を作っていきましょう。皆さんの身近にあるものでまずはWBSの要素分解をやってみましょう。例えば、パソコンや椅子、机、鞄、スマートフォンなど身近にあるものをひとつ選び、どのような要素で構成されているかを観察し、WBSを作ってみましょう。

WBSのフォーマットは図を参考にしてください。パソコンを作る最終目標があった場合に、パソコンはどんな要素でできているでしょうか? モニター、キーボード、ハードディスク、OS、アプリケーション、CPU、メモリ……など様々な要素で構成されていることがわかると思います。それを階層構造にしてWBS を作ってみましょう。

プロジェクト成功率を高めるためのWBS 作成のコツ①

WBSで目標達成のための要素を分解していったわけですが、逆にいうと、これらの要素分解した成果物や要素成果物、活動が全て終わればプロジェクトは完了ということになります。プロジェクトの実行に移ると、プロジェクトマネージャは、それぞれの要素成果物や活動の進捗確認や完了チェックを行っていきます。

この進捗確認や完了チェックの際、「目に見える、または触れられるもの」と「目に見えない、または触れられないもの」とどちらが進捗確認や完了チェックがしやすいですか?「目に見える、または触れられるもの」ですね。筆者の様々なグローバルプロジェクトの経験では、WBS作成時によく「Tangible(タンジブル):触れて感知できる、有形の」という言葉が使われていました。

例えば、要素成果物であるワークパッケージに「営業」というものがあったとします。この「営業」をどう具体的に進捗確認したり完了チェックしたりするでしょうか? 担当から「営業実施しました。終わりました」といわれるだけで本当に要求事項に沿って進捗しているか、完了したかをチェックできるでしょうか?こういった場合、ワークパッケージを「Tangible」にしましょう。

例えば、営業活動前の営業活動計画書、営業活動中の営業先リストや活動報告書、営業活動後の契約書など活動で生み出されるアウトプットなど「Tangible」なものに要素分解しておけば、プロジェクト実行中のチェックもより具体的にかつ明確にできるようになります。この他に例えば、「採用」というワークパッケージではなく本当に採用が完了したかを判断できる「雇用契約書」というワークパッケージにする、または「契約」というワークパッケージではなく、本当に契約が完了したかを判断できる「契約書」というワークパッケージにする、なども「Tangible」の例です。

プロジェクト成功率を高めるための WBS作成のコツ②

WBS で要素分解をしていくと、数多くの成果物、要素成果物、活動が導きだされます。プロジェクト実行中、これらの進捗確認や完了確認をプロジェクトマネージャがしっかりと行っていく必要があります。この確認にはプロジェクトチームメンバーとのコミュニケーションが重要になります。

そのコミュニケーションを円滑化させるために、各成果物、要素成果物、活動に任意のナンバリングまたはコードをつけましょう。例えば、「新店舗開店プロジェクト」があったとします。成果物としては、「店舗」「商品」「スタッフ」「マニュアル」「プロジェクトマネジメント」などがあしたとします。

ナンバリングとは「10000店舗」「20000商品」「30000スタッフ」…などと任意の番号をつけることです。さらに「30000 スタッフ」の要素成果物として「30100採用媒体契約書」「30200採用面接会場申込完了書」……など成果物をさらに細分化した関連する番号でナンバリングするなどします。

「30200採用面接会場申込完了書」の活動として「30201会場候補をWEBで探す」「30202決裁承認を受ける」「30203申込」連する番号でナンバリングしたりします。……などとさらに細分化し関プロジェクトでは似たような名称の要素成果物や活動が出てくる場合があります。プロジェクトチームメンバーとの進捗確認で「『申込』ってどの申込です”? 商品系ですか採用系ですか?」という非効率なコミュニケーションが発生しかねません。

ナンバリングすることで「30203の『申込』の進捗を教えてください」、「30203は現在50%です」というような効率的なコミュニケーションが実現します。

WBS 辞書を作ろう

プロジェクトが大きくなり複雑化すればするほど、WBSのワークパッケージは多くなります。大きなプロジェクトでは、要素成果物や活動の数が数百を超えることもあります。

この場合、プロジェクト進行中に「この要素成果物って何だったっけ?」、忘れないよう、しっかりと各成果物、要素成果物、活動の内容を明文化してたきましょう。各成果物、要素成果物、活動の内容を明文化しておく書類を「WBS辞書」と呼びます。

WBSのフォーマットはエクセルなどで成果物や要素成果物、活動のリストを作成し、そのリストに内容を明文化する方法と、ワードなどで各成果物や要素成果物、活動の内容を明確化する方法などがあります。まさにWBS の各要素の詳細を記した辞書です。

WBS辞書で成果物、要素成果物の内容を明確化する時に重要となる資料がスコープ記述書の成果物スコープです。既述の通り、スコープ記述書の成果物スコープには様々な機能や仕様、設計、制作に用いる技術や方法論などが記載されています。

これらの要求事項や条件とWBSの内容を照らし合わせ、各成果物、要素成果物に必要な機能や仕様、設計、制作に用いる技術や方法論などをWBS辞書に記載しておきましょう。WBS辞書で活動の内容を明確化する際に重要となるのが、スコープ記述番のプロジェクトスコープの情報です。

プロジェクトスコープの情報には作業活動内容、工程やその計画、作業·活動時の手法や方法論、会議、報告などか記載されています。これらの要求事項や条件とWBSの活動を照らし合わせWBS辞書に活動の内容を明文化していきましょう。

WBS とWBS 辞書作成の後にすべきこと

WBSとWBS辞書の作成が終わったら、今一度プロジェクト憲章やスコープ記述書を見てみましょう。すると、多くの場合「あれ? プロジェクト意章の内容と微妙に違うぞ」「スコープ記述書にこの内容も加えておくべきなのでは?」などと感じることがあるでしょう。

例えば、WBSを作成することで、「新たな成果物が必要だった」「こんな制条件があると気がついた」「この範囲もプロジェクトに加えないと目標達成できないことがわかった」など新たな発見があるはずです。プロジェクトの計画では、計画が進むにつれ、計画内容が「詳細化」されていきます。詳細化されればされるほど、最初に気がつかなかったことに気がっいていきます。

WBS作成など、詳細計画をした後には、必ず前工程の文書をチェックし、「整合性が取れているか」を確認しましょう。そして、前工程の文書を改定しなければならない場合、あらかじめ設定した決裁者の承認を経て文書改定をしていきましょう。この「整合性」をとるための改定はプロジェクト計画時に何度も発生します。

グローバルプロジェクトなどではプロジェクト計画時に「back andforth(行ったり来たり)」という言葉をよく使います。前工程の文書と作成した文書を行ったり来たりして整合性をとっていきます。この作業は面倒だと思うかもしれませんが、整合性がとれていない計画書は計画書の意味がありません。計画の詳細化をしはじめた時は前工程の文書改定が多いかもしれませんが、そこでしっかりと前工程の文書との整合性をとっておくことで、詳細化がさらに進んだ時の改定は徐々に少なくなっていきます。

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