<はじめに>経営改善には型がある
同じ成長産業の中でも長所を伸ばしつつ、短所を小さくして高い成長を誇る企業がある一方で、必ずしもそうではない会社も同時に存在します。両者の違いは内部のスタッフのスキルセットやモチベーション、周辺事業とのシナジー効果、ビジネスモデルの違いなど様々な指摘が可能ですが、重要なことは「企業が不調な時、どのように対処するか」ではないでしょうか。
どのような一流企業でも、その成長の過程で必ずと言ってもいいほど、何かの困難に遭遇したり、失敗を経験しています。そして、その苦しい状況からどのようにリカバリーするかが企業や従業員にとって重要なターニングポイントとなります。
今回は「企業の参謀役のための」「経営改善のためのフォーマット」をテーマにデリバリー手法を解説します。
社内改善プロジェクトの提案フォーマット
業務や組織に問題があり改善施策を提案する場合には、あるべき姿を提示し合意した上で、問題を特定します。次に問題の原因や解決策を、思いつきではなく論理立てて表現します。
改善施策を提案し、承認してもらうには、原因や解決策の因果関係を論理立てて説明し、関係者に理解してもらわなくてはなりません。問題らしき事象を闇雲に挙げて、対症療法的な解決策を並べるだけでは、さらに問題を悪化させた、思わぬ抵抗を受けたりします。
まず、問題を論じる前に「あるべき姿」について合意する必要があります。あるべき姿に対して関係者の認識が揃っていないと、解決すべき問題が特定できないからです。あるべき姿に対して、現状がどのようになっているのかを示した上で、問題を特定します。
次に、問題の原因を特定します。「なぜそうなっているのか?」を起点に分岐していく「Whyのロジックツリー」で表現するとよいでしょう。解決策は「〇〇するには?」を起点に分岐していく「Howのロジックツリー」で考えます。
最後に、解決策の候補を、ペイオフ・マトリクスで整理します。施策の効果と実現難易度を縦軸・横軸にとって施策の優先順位を表現します。改善すべき状況においては、問題が複雑に絡み合っていたり、関係者の認識のズレが生じていたりします。
あるベき姿という前提の確認から始まり、1つひとつ論理的に物事を整理して見せることで、関係者の問題解決ヘの意欲を高めていきましょう。
問題の特定:現状とあるべき姿を示し、解決するべき問題を特定する

原因分析:「Whyのロジックツリー」で原因を究明する。また問題と原因を因果関係で表現する

解決策抽出:どのように問題を解決するべきかを「Howのロジックツリー」で表現する

解決策評価:「解決策抽出」で出した解決策の候補を「ペイオフ・マトリクス」で整理して、優先順位を表現する

プロジェクト始動後の活動報告フォーマット
活動報告書では、単にとった行動を列挙するのではなく、うまくいっているのかどうかという状況、そして行動の結果としてどのような成果が出たのかを資料してまとめます。
活動報告書の対象には、プロジェクトや事業などの大規模な活動から、出張、研修、視察などのレベルの個人的な活動まで、多くの種類があります。
どの場合でも同様に留意すベきなのは、やったことの羅列=活動記録にならないようにすることです。報告を受ける側の興味としては、「上手くいっているのかどうか?」に尽きます。
特に大規模な活動は、QCD(Quality、Cost、Delivery)やプロジェクトマネジメントのフレームワークで、活動の要素を見える化するとよいでしょう。
たとえば、品質、コスト、スケジュール、リスク、チーム、スコープ(範囲)、利害関係者という項目に、信号に見立てた3段階の基準を設定します。
たとえば、スケジュールは、一切の遅延なしは青色、3日以内の遅延でリカバリー可能は黄色、1週間以上の遅延でリカバリーに要員追加が必要な場合は赤色といった具合です。
基準値による報告は客観的であり、状況が見える化されます。信号だけではなく、晴れ、曇り、雨など天気予報の表現、矢印の向きなど、視党的に状態が把握できるものを採用するとよいでしょう。
重要なのは、人によって異なる判断にならないように基準値の設定と合意をすることです。このように全体をー覧で見せたのちに、個別の要素の状況をそれぞれに適した表現で提示し、最後に今後の活動をアクションプランとしてまとめて、確実にフォローします。
プロジェクト概要:プロジェクトの目的、ゴールに照らしながら、ステップを全体像で示す

全体の進捗状況:活動の主要な要素を「表」の色付けで視覚的に一覧表示する。

アクションプラン:個別の状況から出てきた問題を解決するためのアクション、期日を「表」でまとめる

いかがでしたでしょうか。企業がより高い確度で新規事業をスタートし、事業開発を成功させるためのフォーマットをご紹介しました。こうしたフォーマットはIRの観点でも非常に重要な位置を占めます。
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