【コーポレートガバナンス入門】取締役が知っておきたい、監査機関と企業経営陣の法的な位置づけ

【コーポレートガバナンス入門】取締役が知っておきたい、監査機関と企業経営陣の法的な位置づけ

<はじめに>起業、昇進、ヘッドハンティングetc..いつかのために知っておきたい企業統制の法律知識

企業のボードメンバーとして、会社全体を俯瞰し、リードしていくためにはその会社の事業に関わる専門的な知見や経験に加えて、財務やマーケティング、戦略論など多くの幅広い知見が要求されます。そしてその最たるものは会社や事業に関する法律と言えるでしょう。

今回は会社法とコーポレートガバナンス(企業統治)の観点から、取締役監査機関法的な位置づけについて解説します。

取締役の法的な位置づけ

取締役はどのように選任されるのか

取締役会は会社の経営方針を決定する機関です。ここでの判断を誤ってしまうと、会社の財政状況などが悪化し、経営の見通しが立たなくなります。不況が続いている現状を考えると最悪の場合は倒産といったことも考えられます。したがって、取締役会のメンバーである取締役に誰を選ぶのかは非常に重要な問題です。

取締役を選ぶ権限をもっているのは、出資者であり会社の所有者である株主です。株主は、会社の最高機関である株主総会に参加し、取締役を選任することで、会社の経営の方向を自ら定めていることになるわけです。なお、株主総会で取締役を選任するにあたっては、普通決議を経なければなりません。したがって、たとえば、創業者である社長が、株主として過半数以上の議決権をもっていなければ、自分の意思だけで取締役を任命するといったことはできないということになります

従業員を取締役に昇格させる場合の手続きは次ページ図のとおりです。なお、選任にあたり、従業員以外の者を社外取締役として招くこともできます。外部から取締役を招く場合、候補者の選定、就任の意向の確認、報酬などの条件交渉、合意と者の選定、就任の意向の確認といった手続きが必要になります。

取締役選任の効力

取締役選任の効力は、株主総会において選任の決議がなされ、取締役が就任を承諾したときに生じます。

選任された取締役の氏名は登記されます。取締役が株主総会で選任されることを条件にあらかじめ就任を承諾している場合は、株主総会での選任決議によって直ちに選任の効力が生じます。また、取締役選任の登記を怠っていると会社と取引をしている第三者に対して自分が取締役だということを主張できなくなります。

定款で取締役の資格を制限できる

たとえば、定款で、取締役を日本人に限定する定めを設けることができます。また、非公開会社の場合は、取締役を株主に限定する定めを置くこともできます。ただ、公開会社の場合は、取締役を株主に限定する定めを置くことは許されません。

なお、取締役が未成年者であってもかまいません。ただ、未成年者は親などの同意がなければ1人で法律行為ができない立場にあるので、未成年者を取締役に選ぶことが適切かどうかをよく検討しなければなりません。

取締役を辞任するときは

取締役は、任期の途中にいつでも辞任することができます。辞任の意思表示は、通常は代表取締役に対して行います。代表取締役に対して行うことができない場合は、取締役会において辞任の意思表示をします。

代表取締役が辞任するときは、他に別の代表取締役がいれば別の代表取締役に、他に代表取締役がいなければ取締役会ヘ辞任する旨を申し出ます。辞任の申出をした時点で辞任の効力が生じます。取締役が辞めた場合、会社としては本店(本社)の所在地で2週間以内に退任の登記をしなければなりません。

登記申請をする場合、登記申請にかかる費用について登録免許税の納付が必要です。本店所在地での役員の変更登記であれば、1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社については1万円)です。

取締役が解任される場合とは

取締役は、通常、任期の満了によって退任しますが、任期の途中で辞任したり、解任させられたりすることもあります。自発的に辞める辞任とは違い、解任は、取締役を辞めさせることです。取締役を解任するには、原則として取締役会からの提案(発議)によって、株主総会で決議する必要があります。

株主総会で解任決議をするためには、総株主の議決権の過半数にあたる株式をもつ株主の出席(定足数)を満たした上で、その議決権の過半数の賛成が必要です。

たとえば、総株主の議決権が100個だとすると、総計51個分の議決権をもつ株主たちが出席し、その過半数にあたる26株以上の議決権をもつ株主が賛成すれば、解任が決定されます。ただ、解任することに正当な理由がない場合、会社は取締役に対して損害賠償責任を負うこともあります

取締役解任の訴えとは

取締役が不正な行為をしたとき、または法令·定款に違反する重大な事実があったにも関わらずその役員を解任する旨の議案が株主総会で否決された場合、一定の要件を満たす株主は裁判所に取締役の解任を請求する訴えを提起することができます。提訴期間は総会の日から30日以内です。6か月前から引き統き総株主の議決権(または発行済株式)の3%以上をもっていれば行使できます(非公開会社では、6か月の保有期間は不要)。

取締役の報酬は

報酬とは、職務執行の対価として会社から支給される財産上の利益のことです。金銭に限らず、現物報酬も含まれます。賞与も職務執行の対価といえますから、報酬と同じ規制に服します。取締役の報酬を業務執行機関である取締役会あるいは代表取締役が自由に決定できるとすると、取締役や代表取締役は自分の好きなように報酬を定めることができることになってしまいます(いわゆる「お手盛り」)。

そこで、このような「お手盛り」の弊害を防止するため、取締役の報酬は定款または株主総会で決定することとされています。定款に定めがあればそれに従いますが、定款に定めがない場合、次の事項を株主総会で定めます。①報酬などのうち額が確定しているものについてはその額を定め、②報酬などのうち額が確定していないものについては、その算定方法を定め、③報酬などのうち金銭でないものについては、その具体的な内容を定めます。

なお、取締役の報酬が具体的に株主総会で決められた場合には、取締役と会社との聞で報酬について契約がかわされたといえるので、取締役の同意がない限り、株主総会や取締役会の決議によって、減額したり不支給とすることはできません。

いったん発生した報酬請求権は、取締役と会社との間で交わされた契約によって取締役にもたらされた既得利益といえるからです。また、取締役個々の報酬額を決める必要はありません。報酬の総額を決議し、それをどう配分するかは取締役会にー任するのがー般的です。

取締役の退職慰労金は株主総会で決定される

退職慰労金は社会一般の用語では「報酬」ではありません。しかし、取締役会でこれを決定できるとすると、取締役らが不当に高額な退職金を給付してしまうおそれもあります。したがって、退職慰労金も「報酬」に含めて考えて、株主総会の決議が必要です。

取締役の報酬はその総額を株主総会の決議で決めればよいということになっています。取締役にもプライバシーはありますから、退任する取締役が受け取る具体的金額が明らかになることを避けるために、実際の株主総会では、「退任した取締役に、当社の役員退職慰労金規程に従って相当額を支払う」と決議することが多いようです。

ただ、このような決議をするには退職慰労金の具体的な額の算定基準が退職慰労金規程などではっきり決まっている必要があり、かつ株主がそれを閲覧できる状態になっていなければなりません。

監査機関によって実現されるコーポレートガバナンス

監査機関の役割と分類

株主による経営者(取締役·執行役)の違法行為の是正という手段はありますが、会社に常駐しているわけではない株主が経営者を監督するのは簡単なことではありません。また、取締役会による経営者の監督も考えられますが、同僚による監督は十分な効果を期待できません。そこで、監査専門機関による是正が重要な役割を果たすことになります。

監査機関とは、監査役会計参与会計監査人監査委員会のことです。これらの監査機関による経営者に対する是正手段としては、以下のものが高ります。

監査役・会計参与・会計監査人の業務

監査役は取締役の不正行為や法令・定款違反行為などがあった場合には、すぐに、そのことを取締役(取締役会設置会社では取締役会)に報告しなければなりません。監査委員の場合には、そのことを取締役会に報告しなければなりません。会計参与の場合は、株主監査役(監査役会)·監査委員会に報告しなければならず、会計監査人の場合は、監査役(監査役会)監査委員会に報告しなければなりません。

また、監査役は、取締役が株主総会に提出する議案・書類を調査しなければならず、それに法令·定款違反や著しく不当な事項があるときは、その調査結果を株主総会に報告しなければなりません。

会計参与は、取締役と共同で作成した計算書類などについて、取締役と意見が違っていた場合には、株主総会で意見を述ベることができます。会計監査人は、計算書類などが法令・定款に適合するかどうかについて、監査役と意見が違っていた場合には、株主総会に出席して意見を述ベることができます。

監査役会とは

監査役会とは監査役によって構成される会議体の監査機関です。おもに大規模な会社において監査役の調査を分担するなどして監査の実効性を高めようとするためのものです。もっとも中小規模の会社にも監査役会を設置することはできます。委員会設置会社を除く公開会社である大会社は、監査役会を置かなければなりません。監査役会は3人以上の監査役で構成され、半数以上は社外監査役でなければなりません。また、監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければなりません。

内部統制システムにはどんな機能があるのか

内部統制システムとは、会社の業務の適正を確保するために必要な機構(システム)のことです。

具体的には、その会社の取締役の職務執行を法令・定款に適合させるために必要な体制のことで、会社の業務の適正を確保するのに必要な体制を意味します。特に大企業の場合、虚偽記載やインサイダー取引などの違法行為が社会に与える影響が大きいの工程度の規模をもつ会社では、内部統制システムを創りあげることが必要となってきます。

内部統制システムの整備

内部統制システムを整備する理由は、会社内から不正行為を排除するためです。また、内部監査は、内部統制システムが有効に機能しているかどうかをチェックするために行われています。取締役会は内部統制システムの方針を決定し、経営者の内部統制システムの運用に対して監督責任を負います。さらに、監査役は取締役が内部統制システムヘの責任を果たしているかどうかについて監査をする必要があります。

内部統制システムは、基本計画の作成、現状分析、文書化、基本計画の進捗状況のモニタリングという順番で手続きを踏みます。基本計画の策定はトップダウンで周知徹底します。また、計画の文書化は、内部統制システムを評価する際に欠かせません。文書化を行うことで、内部統制システムに問題が発生した際には迅速な対応が可能になります。

経営の問題点について株主から質問を受けた場合、取締役は適切に回答する必要があります。内部統制システムに問題点がある場合には、どのようにその問題点を解消するのかの見通しを株主に説明しなければなりません。

株主総会での事業報告と内部統制

会社の財政状態や経営成績に関する会計情報を扱う計算書類とは異なって、事業報告は、会社の事業の状況を文章で説明した書類です。定時株主総会で事業報告を株主に提供する際には、事業報告に記載した内容を補足する附属明細書も提出します。事業報告には、その会社の状況に関する重要な事項、内部統制システムに関する事項を記載します。事業報告も計算書類と同じように、作成、監査(監査役を置いている会社の場合は監査役によって行われます)、承認(取締役会設置会社の場合には取締役会によって行われます)を受ける必要があります。そしてその後、取締役が株主総会にその内容を報告すると言う流れになります。

いかがでしたでしょうか。コーポレートガバナンスに対する社会的な注目も高まる中で、上場企業に限らず、ベンチャーを含む非上場企業でもIRやSRの考え方は広がっており、特に株主総会の実務は非常に重要な役割を担っています。

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